|
さて、統合失調症というと(或いは、精神疾患一般について)、あまり身近な感じがしなかったり、自分には関係のないもの、と感じる方が多いかもしれません。しかし、本当に、統合失調症はそんなに珍しい病気なのでしょうか。統計的に見ると、世界のどの地域でも、およそ120人に1人が生涯のうちに、1度は罹患する〔多くは、15〜30歳に発症する〕という数値が出ています。また、発症に男女差はなく、このようなことをふまえると、統合失調症は、むしろ、誰が罹ってもおかしくない、身近な病気、ということができそうです。
それでは、どのような原因で、統合失調症に罹患してしまうのでしょうか?
残念ながら統合失調症も、他の多くの精神疾患と同じく、その本質的な原因が突き止められるまでには至っていません。しかし、生物学的な研究がすすむにつれ、統合失調症は、脳・神経細胞とそのネットワークがおかされる病気であることがわかってきました。そのため、昔のように、統合失調症を「キツネつき」だとか、「悪霊の仕業」などといった考えを持つ人は、ごく少数になってきていると思います。ただ、それでも、統合失調症の原因については、いまだに、多くの誤解があることも事実です。
例えば、統合失調症は遺伝病だ、という考えです。これは俗説です。第二次世界大戦以前の精神医学では、統合失調症の原因は遺伝であるという考えが当然のこととされていました。しかし、その後の研究によって、こうした考え方がまったくの誤りであることが証明されています。また、よくある誤解に、家族(特に母親)が統合失調症患者をつくる、というものがあります。これは、第二次世界大戦後のアメリカで、あがった病因説です。なるほど、統合失調症の患者さんの家族の中には、家族関係がしっくりいかず、これは病気になってもしかたないなあ、というケースがあることは事実かもしれません。しかし、大半はそんなことはありませんし、逆に、家族の中に病人がでたために、家族関係がぎくしゃくしてしまった、ということも考えられます。「家族が統合失調症をつくる」説は、根拠が曖昧で、とても採用できる病因説ではありません。
現在では、統合失調症の原因は、「脆弱性―ストレス仮説」というモデルで説明されています。おおざっぱに言うと、その個人が生まれながらにしてもつ素因と、環境的ストレスが、複雑に作用し合って、統合失調症を発症してしまう、ということです。 |