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うつ病というと、抑うつ気分のような、精神面にあらわれている症状がクローズアップされがちですが、身体面にも症状はあらわれます。ここでは、精神面にあらわれる症状と身体面にあらわれる症状を整理しておきたいと思います。
〈精神面にあらわれる症状〉
●感情面
抑うつ気分、不安感、イライラ感、劣等感、後悔、心配症、人に会いたくない、自責感、自殺念慮
●思考面
思考力減退、悲観的思考、記憶力低下、妄想(心気妄想、罪業妄想、貧困妄想)
●意欲面
億劫、無気力、根気がない、興味・関心の喪失、集中力低下
〈身体面にあらわれる症状〉
全身倦怠感、易疲労、頭重、頭痛、肩こり、筋肉痛、眼精疲労、不眠、過眠、食欲不振、胃部不快感、過食、性欲減退、胸部圧迫感、腰痛、頻尿、口渇、便秘、しびれ感、冷感、関節痛など
精神面にあらわれる症状のうち、特に強調しておかなければならない症状は、「自殺念慮」かもしれません。うつ病の患者さんのほとんど全てといっていいほど多くの方に、自殺願望が生まれます。うつ病になりやすい方は、元来、責任感が強く、まじめな方が多いため、何もかも億劫になり、家事や仕事がこなせない自分を責め、絶望し、将来に希望が持てなくなります。その結果、「死にたい」「死ぬしかない」と思い詰めることになります。また、時期的に見て、とりわけ自殺の危険性が高いのは、症状が回復しかけた頃です。ベッドから起き上がることもできないほど重症のときは、自殺するだけのエネルギーもない状態ですから比較的すくないのですが、よくなってきたと感じられる頃は、死にたいと思えばいつでも実行に移すことができます。ですから、周囲の人は、回復してきたからといって安心したり、甘くみてはいけません。家族は細心の注意を払いながら、あたたかく見守る必要があります。繰り返しになりますが、「心のカゼ」であるうつ病では、残念ながら実際に命を絶つ人が少なくありません。そういう意味では、うつ病は死につながる危険性のある病気のひとつであると心得ておいたほうが良いでしょう。
さて身体面にあらわれてくる症状に関連して、ぜひご理解いただきたいものに「仮面うつ病」があります。うつ病というと、先にあげた、不安感や意欲低下などの精神症状を思い浮かべがちですが、そうした「いかにもうつ病らしい」精神症状よりも、身体症状が前面に出る場合があります。身体症状という仮面をかぶっていて、うつ病に見えないことから、「仮面うつ病」と呼ばれます。体の具合が悪いのですから、たいていの方は内科などを受診します。しかし、仮面うつ病は心の病ですから、さまざまな臨床検査をしても、異常はみとめられません。ご本人にとってみれば、異常なしといわれても、実際につらい症状を抱えているわけですから、納得がいかず、当然、ほかの診療科へいったり、病院を変えたりすることになります。こうしたことは、時間や費用の無駄になるだけでなく、正しい診断が得られず、うつ病の治療の開始が遅れることになり、やっかいです。
身体にあらわれる症状は、全身症状と局部症状に分けることができます。仮面うつ病の全身症状は、ほかのうつ病と同じで、食欲障害、睡眠障害、疲労感、倦怠感などがあげられます。身体の局部にあらわれる症状は、頭痛や頭重感、はちまきを巻いている感じ、肩こり、腰痛、手足のしびれなど、さまざまなものがあります。このような局部の症状が目立つために、患者さん自身も精神症状を見逃してしまいがちです。 |