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妄想性障害

F22.0 妄想性障害 Delusional disorder

 

疾患の具体例

42歳、女性。独身の会社員。テレビに出ていたある男性歌手が、自分に好意をもっていると思っています。なんとか直接会いたいがために、その男性歌手の家を突き止めました。家の前で待ち伏せし、話しかけましたが無視され、ショックを受けます。それでも何度もラブレターを送り、家の近所や駅などに足を運んで、会える機会を作りました。しかし、男性歌手と一緒にいた事務所スタッフから苦情を言われ、「相手が自分を好いているのに、引き裂かれるのはおかしい」と怒りを感じました。逆に、自分から事務所に苦情のメールを何通も送り続けましたが、肝心の男性歌手からは何の反応もなく、イライラを募らせていました。

そうした女性の行動を、同居している親が「おかしい」と気づき、病院に行くことになりました。医師からは「妄想性障害」と診断されました。

症 状

妄想性障害は、1つまたはそれ以上の妄想が持続的に生じます。数ヵ月以上、時には生涯にわたって発展することもあります。通常、他の精神疾患の症状は見られず、幻聴や感情鈍麻など統合失調症の既往歴もありません。ただ、時折、抑うつが現れたり、幻覚や幻嗅(実際にはない臭いを感じる)が現れたりすることもあります。高齢の患者さんでは特にそうした様子が見られます。 また、病識がなく、妄想の内容を他人から「不条理である」と言われても、受け入れられません。患者さんの多くはイライラしやすく、不機嫌な気分で過ごしています。 妄想の内容は実にさまざまで、『DSM-5』では主に下記の5つに分類しています。

被愛型…

ある人物が自分に恋愛感情をもっていると思う状態で、その人に接触しようと行動することもあります。通常、有名人や職場の上司など、自分より位が高い人が妄想の対象になります。

誇大型…自分は卓越した能力、見識をもっていると思う状態。例えば、何か重大な発見をした、著名人と特別に親しいなどという妄想をもちます。

嫉妬型…

配偶者や恋人が不貞をはたらいたと思う状態です。少し衣服が乱れているなど些細な変化を、不貞をはたらいたことの証拠だと言い張ることがあります。

被害型…

誰かにだまされている、見張られている、毒を盛られているなど、不当な被害にあったと思う状態です。このタイプは、妄想のなかで自分に危害を加える相手に対して強い怒りを感じていることがあります。その結果、暴力的になったり、行政機関に何度も苦情を入れたり、裁判を起こしたりすることもあります。

身体型…

自分の身体に関係する妄想が生じています。自分は悪臭を放っているのではないか。皮膚に虫が入り込んでいるのではないか。自分は醜いのではないかという妄想が多く見られます。

 

なお、患者さんが妄想のことを口にしたり、妄想に関連した行動をとったりすることがなければ、一見、正常に見えるのも妄想性障害の特徴です。

 

原 因

妄想の原因はコカインなどの物質ではなく、脳疾患などの病気でもない。醜形恐怖症や強迫症など別の精神疾患でもうまく説明されない状態です。

 

特徴

妄想性障害の生涯有病率は0.2%と推定されています。もっともよく見られるタイプは「被害型」です。「嫉妬型」は、男性に多いと思われますが、妄想性障害全体の発生頻度にあまり性差はありません。普通、中年期に発病しますが、自分の身体が醜いと思う妄想(醜形恐怖)は若い人に起きることもあります。

 

経 過

統合失調症に比べると、心身の機能は良好です。ただ、妄想性障害の症状が安定していると思ったら、あとから統合失調症を発症する人もいます。妄想性障害の症状はそれほど幅広くなく、妄想に限られます。しかし、症状が重い人は職場や家庭でうまくいかず、社会から孤立してしまう場合もあります。

 

診断基準:ICD-10

妄想がもっとも顕著な、あるいは唯一の臨床的な特徴である。妄想あるいは妄想群は少なくとも3ヵ月間は存在し、かつ所属する文化集団に共有されるものもではなく、明らかに個人的なものでなければならない。気分の障害が存在しない時に妄想が持続していれば、抑うつ症状あるいは完全なうつ病エピソードが時々出現してもかまわない。脳疾患の所見はなく、幻聴はないか、あってもただ一時的なものであり、統合失調症状(被支配妄想や考想伝播など)の既往もあってはならない。

 

診断基準:DSM-5

  • 1つ(またはそれ以上)の妄想が1ヵ月間またはそれ以上存在する。
  • .統合失調症の基準Aを満たしたことがない。  注:幻覚はあったとしても優勢ではなく、妄想主題に関連していること(例:寄生虫妄想に基づく虫が寄生しているという感覚)
  • .妄想またはそれから波及する影響を除けば、機能は著しく障害されておらず、行動は目立って奇異であったり奇妙ではない。
  • .躁病エピソードもしくは抑うつエピソードが生じたとしても、それは妄想の持続期間に比べて短い。
  • その障害は、物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。また、醜形恐怖症や強迫症など他の精神疾患ではうまく説明されない。

いずれかを特定せよ

被愛型:この下位分類は、妄想の中心主題が、ある人物が自分に恋愛感情をもっているという場合に適用される。

誇大型:この下位分類は、妄想の中心主題が、卓越した(しかし実際は認められない)才能または見識をもっているという確信、または重大な発見をしたという確信である場合に適用される。

嫉妬型:この下位分類は、妄想の中心主題が、自分の配偶者や恋人が不貞をはたらいているというものである場合に適用される。

被害型:この下位分類は、妄想の中心主題が、陰謀を企てられている、だまされている、見張られている、つけられている、毒や薬を盛られている、不当に中傷されている、嫌がらせを受けている、長期目標の遂行を邪魔されるといった確信である場合に適用される。

身体型:この下位分類は、妄想の中心主題が、身体機能または感覚にかかわる場合に適用される。

混合型:この下位分類は、複数の妄想の主題のうち、いずれも優勢でない場合に適用される。

特定不能型:この下位分類は、支配的な妄想確信がはっきりと決定できない場合やある特定の型にならない場合(例:際立った被害的もしくは誇大的な要素のない関係妄想)に適用される。

 

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