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こころの病気のはなし > 専門編 > 急性ストレス障害・外傷後ストレス障害

急性ストレス障害・外傷後ストレス障害

非常に強い心的外傷体験(自然・人為災害、犯罪や性的・暴力的被害、虐待、戦闘体験といった自分自身あるいは身近な人の安全や生命が脅かされる体験のこと)の後に、不安発作や不眠、集中困難などの症状を示す障害を急性ストレス障害と呼びます。

急性ストレス障害により生じる症状が1か月以上持続する場合、外傷後ストレス障害と診断されます。

 

疫 学

急性ストレス障害の発症率は7.2〜33%と言われており、研究によっては外傷体験から急性ストレス障害を発症するのは30%〜50%、そこからPTSDに発症するケースはそのうちの半数という結果になっている。さらに、PTSDの生涯有病率は男性5%、女性は10%であると言われています。

 

病 因

病因となるのは深刻な心的外傷体験であるが、それらに加えストレスに対する個人の脆弱性、どういった類の外傷体験か、また外傷体験時やその後の状況、ソーシャルサポートの有無などが発症に影響します。

さらには個人が外傷体験をどのようにとらえ理解しているのかという認知も関与していると言われています。

 

症 状

心的外傷体験の後、

  1. 外傷的出来事の再体験・・・外傷体験を繰り返し想起したりそれに関連した夢をみる
  2. 回避ないし知覚の鈍麻・・・外傷体験に関連があるあらゆるものを回避する、感情が 麻痺し反応が鈍くなる
  3. 覚醒亢進・・・眠れなくなる、過剰に反応するようになる、集中困難

上記3つの中核症状がみられる。

その他には強い恐怖感や無力感、頻脈や発汗が認められる。このような症状が外傷体験後4週間以内に生じ、最低2日間最大4週間持続するものを急性ストレス障害、1ヶ月以上持続するものを外傷後ストレス障害とされています。

 

治 療

大きく薬物療法を心理療法が治療として選択されます。

薬物療法に関しては、3つの中核症状に対しては抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が用いられます。不安症状や睡眠の改善には抗不安薬であるベンゾジアゼピン類が有効ですが、急性期の使用や中止時の離脱に伴い症状が悪化することがあるため注意が必要です。さらに精神病症状が伴う場合には、抗精神病薬が、中核症状のうち再体験症状には抗てんかん薬が有効であるとされています。

心理療法としては認知行動療法、精神力動的心理療法、EMDR、支持的精神療法、心理教育、ケースマネジメント、等が挙げられます。治療の導入・継続には支持的精神療法、心理教育、ケースマネジメントが有用であるとされています。中核症状に対しては認知行動療法の有効であり、具体的には長時間暴露療法、ストレス免疫訓練等が挙げられます。また、患者同士のグループ療法も症状を抑える可能性があるといわれています。

 

診断基準(急性ストレス障害/急性ストレス反応)

DSM-W-TR ICD-10
コード番号 308.3 コード番号 F43.0
  1. その人は,以下の2つともがともに認められる.
  1. 実際にまたは危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を,1度または数度,あるいは自分または他人の身体の保全に迫る危険を,その人が体験し,目撃し,または直面した.
  2. その人の反応は強い恐怖,無力感または戦慄に関するものである.
  1. 苦痛な出来事を体験している間,またはその後に,以下の解離性症状の3つ(またはそれ以上)がある.
  1. 麻痺した,孤立した,または感情反応が無い状態という主観的感覚
  2. 自分の周囲に対する注意の減弱(例:“ぼうっとしている”)
  3. 現実感喪失
  4. 離人症
  5. 解離性健忘(すなわち,外傷の重要な側面の想起不能)
  1. 外傷的な出来事は,少なくとも以下の1つの形で再体験され続けている:反復する心像,思考,夢,錯覚,フラッシュバックのエピソード,またはもとの体験を再体験する感覚;または,外傷的な出来事を想起させるものに暴露されたときの苦痛
  2. 外傷を想起させる刺激(例:思考,感情,会話,活動,場所,人物)の著しい回避
  3. 強い不安症状または覚醒の亢進(例:睡眠障害,いらだたしさ,集中困難,過度の警戒心,過剰な驚愕反応,運動性不安)
  4. その障害は,臨床上著しい苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている,または外傷的な体験を家族で話すことで必要な助けを得たり,人的資源を動員するなど,必要な課題を遂行する能力を傷害している.
  5. その障害は,最低2日間,最大4週間持続し,外傷的出来事の4週間以内に起こっている.
  6. 障害は,物質(例:乱用薬物,投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではなく,短気精神病性障害ではうまく説明されず,すでに存在していたT軸またはU軸の障害の単なる悪化でもない.
  1. 極度な精神的または身体的ストレスに曝露されていること.
  2. ストレスへの曝露からすぐに症状は始まること(1時間以内).
  3. その症状は下記の2群からなり,次の重症度に分類される.
    F43.00 軽度:(1)だけを満たすもの
    F43.01 中等度:(1)に加えて,(2)のうちの2症状があるもの
    F43.02 重度:(1)に加えて,(2)のうちの4症状があるもの,あるいは解離性の混迷を認めるもの(F44.2を参照)
  1. 全般性不安障害(F41.1)の基準B・C・D項
  2. (a) 期待される対人関係からのひきこもり
    (b) 注意の搾取
    (c) 明白な失見当識
    (d) 怒りや言語的攻撃性
    (e) 絶望や失望
    (f) 不適切または無目的な過活動性
    (g) 制御できない過度の悲観
    (各地域における文化的規範を
    基に判断すること)
  1. ストレス因が一時的なものであったり緩和できるものであれば,その症状は8時間以内には鎮静化しはじめねばらなない.また,ストレス因が持続するものであっても,その症状は48時間以内に沈静化しはじめること.
  2. 主要な除外基準: この反応は,ICD-10の他の精神または行動の障害が現存存在していないか(ただし,全般性不安障害(F41.1)やパーソナリティ障害(F60.-)を除く),ICD-10の他の精神または行動の障害の終了した後3ヵ月以内ではないこと.

 

診断基準(外傷後ストレス障害)

DSM-W-TR ICD-10
コード番号 309.81 コード番号 F43.1
  1. その人は,以下の2つがともにともに認められる外傷的な出来事に暴露されたことがある.
  1. 実際または危うく死ぬまたは重症を負うような出来事を,1度または数度,あるいは自分または他人の身体の保全に迫る危険を,その人が体験し,目撃し,または直面した.
  2. その人の反応は強い恐怖,無力感または戦慄に関するものである. 注:子どもの場合,むしろまとまりのないまたは興奮した行動によって表現されることがある.
  1. 外傷的な出来事が,以下の1つ(またはそれ以上)の形で再体験され続けている.
  1. 出来事の反復的,侵入的,かつ苦痛な想起で,それは心像,思想,または知覚を含む.
    注:子どもの場合はむしろ,まとまりのないまたは興奮した行動によって表現されることがある.
  2. 出来事についての反復的で苦痛な夢
    注:子どもの場合は,はっきりとして内容のない恐ろしい夢であることがある.
  3. 外傷的な出来事が再び起こっているかのように行動したり,感じたりする(その体験を再体験する感覚,錯覚,幻覚,および解離性フラッシュバックのエピソードを含む,また,覚醒時または中毒時に起こるものを含む).
  4. 外傷的出来事の1つの側面を象徴し,または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合に生じる,強い心理的苦痛
  5. 外傷的出来事の1つの側面を象徴し,または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合の生理学的反応性
  1. 以下の3つ(またはそれ以上)によって示される,(外傷以前には存在していなかった)外傷と関連した刺激の持続的回避と,全般的反応性の麻痺:
  1. 外傷と関連した思考,感情,または会話を回避しようとする努力
  2. 外傷を想起させる活動,場所,または人物を回避しようとする努力
  3. 外傷の重要な側面の想起不能
  4. 重要な活動の関心または参加の著しい減退
  5. 他の人から孤立している,または疎遠に成っているという感覚
  6. 感情の範囲の縮小(例:愛の感情をもつことができない)
  7. 未来が縮小した感覚(例:仕事,結婚,子ども,または正常な寿命を期待しない)
  1. (外傷以前は存在していなかった)持続的な覚醒亢進症状で,以下の2つ(またはそれ以上)によって示される.
  1. 入眠,または睡眠維持の困難
  2. いらだたしさまたは怒りの爆発
  3. 集中困難
  4. 過度の警戒心
  5. 過剰な驚愕反応
  1. 障害(基準B,C,およびDの症状)の持続期間が1ヶ月以上
  2. 障害は,臨床上著しい苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.
  1. 並はずれた脅威や破局的な性質でストレスの強い出来事または状況(短期または長期にわたる)に曝露されて,それはほとんどの人にとって広範な苦痛をもたらすと考えられるようなものであること.
  2. 乱入してきた「フラッシュバック」,生々しい記憶,繰り返し見る夢,あるいはストレス因に似た状況や関連した状況に曝されたときに体験する体験する苦痛によって,ストレス因の記憶がしつこくよみがえったり,「再体験」されたりする.
  3. そのストレス因と類似または関係する状況からの現実的な回避,あるいは回避を好むこと.それらは,ストレス因に曝される以前には存在していないこと.
  4. 次(1)または(2)のうち,いずれかが存在すること.
  1. 想起不能が,部分的であれ完全なものであれ,ストレス因に曝された時期のいくつかの重要な局面として,みられること.
  2. 次のうちの2項目以上として示される心理的な感受性と覚醒の増大による頑固な症状(ストレス因に曝される以前には存在していないこと)
    (a) 入眠困難や睡眠(熟睡)困難
    (b) 焦燥感または怒りの爆発
    (c) 集中困難
    (d) 思慮不足
    (e) 過度の驚愕反応
  1. 基準B・C・D項のすべてが,ストレスフルな出来事の6ヵ月以内またはストレス期の終わりの時点までに起こっていること(研究によっては,6ヵ月以上遅れた発症も含めてもよいが,その場合には明確に区別して特定しておくべきである).

☆参考・引用文献

・精神医学ハンドブック 小此木啓吾・深津千賀子・大野裕編 1998 創元社

・知っておきたい精神医学の基礎知識 サイコロジストとコ・メディカルのために 上島国敏・上別府圭子・平島奈津子編 2007 誠信書房

・カプラン精神医学ハンドブック 融道男他訳 2003 メディカルサイエンスインターナショナル

・DSM-W-TR精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎他訳 2003 医学書院

・ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 融道男他監訳 医学書院

・ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 中根充文訳 2008 医学書院

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