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睡眠時遊行症(夢中遊行症[夢遊病])

F51.3 睡眠時遊行症(夢中遊行症[夢遊病])

Sleepwalking (somnambulism)

疾患の具体例

34歳女性。広告代理店で忙しく働いています。徹夜、残業、休日出勤も珍しくなく、体が疲弊していました。夜遅くに帰宅しては、食事もろくにとらず、すぐにベッドに入るような毎日です。ある朝、目が覚めると、冷蔵庫に入っていたはずの食べ物がなくなっていました。買い置きしておいたパンや飲み物もなくなっています。おかしいと思いながらそのまま時期がすぎましたが、ある時、友人が泊まりに来た翌朝、「夜中に起き出して冷蔵庫の中のものを食べていた。話しかけても反応がなかった」と報告されました。自分ではまったく覚えていません。不安になって精神科クリニックを受診すると「睡眠時遊行症」と診断されました。

 

症 状

睡眠時遊行症はいわゆる夢遊病のことで、眠っているはずなのにベッドから起き出して何かしらの行動をとる障害です。一度や二度でなく、繰り返しそうした行動をとります。家の中をうろうろと歩くだけのこともあれば、衣服を身に着けたり、入浴をしようとしたり、家から出て車の運転まですることもあります。その間、けがをしたり事故に遭ったりする危険性も懸念されます。時には、暴力的活動や性的活動に出る場合もあり、周囲の人は大変困惑します。

また、患者さんによっては、しゃべったり、叫んだりしますが、目がうつろで周囲の応答には反応が鈍いことがほとんどです。

多くの場合、数分間の行動ののちに周囲が穏やかに誘導すると再び入眠します。まれに、覚醒して終わることもあります。病的な状態に至る前に目覚める人もいます。いずれにしても、覚醒してから遊行時の行動を思い出すことはあまりありません。

 

特 徴

睡眠時遊行のエピソードは、通常、夜間睡眠の初めの3分の1の間で発生します。深い眠りに入っている時に、周囲が無理やり覚醒させると、症状が生じることもあります。特に子どもではその現象が著しく見られます。

 

有病率

一般に4〜8歳の間に発症し、最も頻度が高いのは12歳前後です。子どもの10〜30%が睡眠時遊行エピソードを1回以上経験しており、2〜3%は何回も経験するという報告があります。子どものうちは女児に多く生じますが、大人は男性に多いと言われています。大人の場合、単発の睡眠時遊行エピソードの有望率は1.0〜7.0%、毎週あるいは毎月のエピソードは0.5〜0.7%です。生涯にわたる有病率は29.2%であり、大人の過去1年間の有病率は3.6%です。睡眠時遊行エピソード中の暴力的活動や性的活動は、大人に生じることが多いとされています。エピソード中に何かを食べる症状は、女性に多く見られます。

 

経 過

年齢が増すにつれて発症頻度が低下します。子どもの頃に発症しなかった人が、大人になってから発症した場合は、閉塞性睡眠時無呼吸、てんかん夜間発作、または医薬品の影響など、特定の病気と関連していることもあり得ます。高齢者の場合は、認知症の初期に初発することもあります。

 

原 因

環境要因:鎮静薬の使用、断眠(うつ病の治療などで一晩眠らせないこと)、睡眠覚醒スケジュールの乱れ、疲労感、身体的あるいは情動的ストレスは、睡眠時遊行エピソードの可能性を増大させます。また、発熱が深い眠りからの覚醒障害を誘発するとも考えられています。家系内発症をする傾向があり、おそらく微細な神経学的異常が関係していると見られます。

遺伝要因と生理学的要因:睡眠時遊行をもつ人の80%に、睡眠時遊行症や睡眠時驚愕症の家族歴がある可能性が指摘されています。両親にこれらの病歴がある場合、睡眠時遊行の危険性はさらに高まります。

 

治 療

けがをさせないための予防策と、深い眠りを抑制する薬物の使用です。

 

診断基準:ICD-10

以下の臨床特徴は確定診断のために必須である。

  1. 主症状は通常、夜間睡眠の初めの3分の1までの間に睡眠中にベッドから起き上がり、周囲を歩き回るエピソードが1回以上あることである。
  2. エピソード中、患者はぼんやりと何かをみつめるような顔をしており、患者の行動に影響を及ぼそうとしたり、会話を交わそうとする他人の試みには比較的反応が鈍く、はっきり目覚めさせるにはかなりの困難を伴う。
  3. 覚醒時には(睡眠時遊行直後にせよ、翌朝にせよ)、睡眠時遊行中の出来事に関して思い出すことができない。 (d)エピソードからの覚醒直後に短期間ある程度の混乱と見当識障害を示すことがあっても、数分以内に精神活動と行動は正常になる。
  4. 認知症のような器質性精神障害あるいはてんかんのような身体的障害のいかなる所見もない。

 

診断基準:DSM-5

A. 睡眠から不完全に覚醒するエピソードが反復し、通常は主要睡眠時間帯の最初の1/3の間に起こり、以下のいずれかの症状を伴う。

  1. 睡眠時遊行症型:睡眠中にベッドから起き上がり歩き回るエピソードの反復、睡眠時遊行の間、その人はうつろな表情で視線を動かさず、他の人が話しかけようとしてもあまり反応せず、覚醒させるのがきわめて困難である。
  2. 睡眠時驚愕症型:睡眠から突然驚愕覚醒するというエピソードの反復で、通常は恐怖の叫び声で始まる。各エピソード中に、強い恐怖と瞳孔散大、頻脈、呼吸促迫、発汗など自律神経系緊張の徴候がある。エピソード中、他の人達が落ち着かせようとしても反応がかなり悪い。

B. 夢の映像はまったく、または少ししか早期されない(例:たった1つの情景しか)。

C. エピソードについての健忘がある。

D. そのエピソードは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

E. その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)による生理学的作用によるものではない。

F. 併存する精神疾患または医学的疾患では、睡眠時遊行症または睡眠時驚愕症のエピソードを説明できない。

※参考文献

『IDC-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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