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こころの病気のはなし > 専門編 > 依存性パーソナリティ障害

依存性パーソナリティ障害

依存性パーソナリティ障害は,自己の無力感と他者への依存を特徴とするパーソナリティ障害で,自分一人では無力で生きていけないので人に頼らなければならないという思い込みのもとに,自分を低め不当なまでの自己犠牲を捧げてまで相手に合わせようとします。ことに重要な意思決定の場面では決断することができず,他人に頼ろうとするのです。したがって,依存性パーソナリティ障害の人は愛想や人当たりよく,サービス精神が旺盛です。従順で,とても「良い子」「いい人」として振る舞い,よく気がつき,相手の機嫌に敏感です。

依存性パーソナリティ障害には,受動的なタイプと能動的なタイプとがあります。前者は「赤ん坊型」「ペット型」ともいうもので,赤ん坊やペットのように自立心や生活力がなく,相手の顔色をうかがいながら上手に甘えて世話や保護を受けています。ときに主人が横暴な真似をしても,ただ耐えるしかないと思っています。一方で,暴力をふるわれたり,性的,経済的搾取を受けている場合も,相手にすがりつくしかないと思い込んでいるのです。後者の能動的なタイプは「献身型」と呼ぶべきもので,もっと活動的で自立能力や生活力もあります。しかし,自分一人では不安で生きていけないという思い込みに縛られているのです。

 

定義

患者は非常に依存的で服従しやすいです。自信には乏しく,人生の重大な局面で他人に責任を負ってもらいます。

 

疫学

  1. 有病率は男性よりも女性で高いですが,男性では見逃されているかもしれません。
  2. このパーソナリティ障害はよく見られ,おそらく全パーソナリティ障害のうちの2.5%を占めると思われます。
  3. 兄姉よりも弟妹に多く見られます。

 

原因

慢性身体疾患,分離不安,または小児期における両親の喪失が素因となることがありえます。

 

精神力動論

  1. 分離に関する問題が未解決です。
  2. 依存的な構えは攻撃性への防衛機制です。

 

診断

依存性パーソナリティ障害の患者は,他者からの度を超した保護を求めます。これがしがみつき行動,服従,分離への恐怖,対人関係上の依存性につながります。

面接においては,むしろ従順に見え,協力を惜しまず,単刀直入な質問をいとわないです。手引きを期待しているからです。受け身で,意見の不一致を表現することが困難です。悲観的,優柔不断であり,性的あるいは攻撃的な感情を表に出すことを怖がります。二人組精神病(folie a deux. 共有精神病)では,2人の一方がこの障害に罹患しているのがふつうです。服従する側のパートナーは,攻撃的で自己主張をする側のパートナーに依存し,妄想体系の維持に加担します。

 

鑑別診断

  1. 広場恐怖 家から出ること,離れていることを怖がります。
  2. 演技性および境界性パーソナリティ障害 患者の依存関係は複数であり,露骨に操作的です。

 

経過と予後

経過はさまざまです。特定の対人関係が破綻した場合,抑うつ状態を呈することがあります。

治療による予後はよいです。隷属的関係から離脱する「健康的な」道のりに耐えられないこともあります。

 

治療

  1. 精神療法
    洞察志向的治療は,それまで繰り返されたパターンの理解の手助けとなり,これによって依存的でなくなり,自己主張をし,自信が得られます。行動療法,自己主張訓練,家族療法,集団療法も有効です。医師は病的な対人関係における患者の愛着の感情を尊重すべきです。
  2. 薬物療法
    薬物療法は,不安や抑うつなどの特定の症状の治療に使われています。アルプラゾラムはパニック発作を呈する患者に有効です。抑うつや引きこもり症状に精神刺激薬が有効ならば,それを使うべきです。ベンゾジアゼピン系薬物とセロトニン作動薬も有効です。

 

診断基準

DSM-W-TR ICD-10
コード番号301.6
依存性パーソナリティ障害
(dependent personality disorder)
コード番号F60.7
依存性パーソナリティ障害
(Dependent personality disorder)

面倒をみてもらいたいという広範で 過剰な欲求があり,そのために従属 的でしがみつく行動をとり,分離に 対する不安を感じる。成人期早期 までに始まり,種々の状況で明らか になる。以下のうち5つ(またはそれ 以上)によって示される。

  1. 日常のことを決めるにも,他の 人達からのありあまるほどの助言 と保証がなければできない。
  2. 自分の生活のほとんどの主要 な領域で,他人に責任をとってもら うことを必要とする。
  3. 支持または是認を失うことを恐 れるために,他人の意見に反対を 表明することが困難である。 注:懲罰に対する現実的な恐怖は 含めないこと。
  4. 自分自身の考えで計画を始め たり,または物事を行うことが困難 である(動機または気力が欠如して いるというより,むしろ判断または 能力に自信がないためである。
  5. 他人からの愛育および支持を 得るために,不快なことまで自分か ら進んでするほどやりすぎてしまう。
  6. 自分の面倒をみることができな いという誇張された恐怖のために. 1人になると不安,または無力感を 感じる。
  7. 1つの親密な関係が終わったと きに,自分を世話し支えてくれる基 になる別の関係を必死で求める。
  8. 自分1人が残されて,自分で自 分の面倒をみることになるという恐 怖に,非現実的なまでにとらわれて いる。

以下によって特徴づけられるパー ソナリティ障害:

  1. 他人に自分の重要な生活上の 決定の大部分をしてもらうことを促 したり,受け入れたりすること。
  2. 自分の欲求を自分が依存して いる他人の欲求に従属させること, および他人の意思に過度に従うこ と。
  3. 自分が依存している人には,た とえ正当なことであっても要求した がらないこと。
  4. 自分のことが一人でできないと いう過度の恐れのため,一人でいる と不安や無力感を感じること。
  5. 親密な関係をもっている人から 見捨てられたり,自分のことを一人 でしなければならなかったりするこ とへの恐れにとらわれること。
  6. 他人からの過剰な助言や保証 がなければ,日常生活で決断する 能力に限界があること。

関連病像として自分を無力で,不 完全で,精力に欠けると感じている ことが含まれる。

 

<含>

無力性,不全性,受動性およ び自己破滅性パーソナリティ(障害)

【参考・引用文献】

・カプラン精神医学ハンドブック 融道男他訳 2010 メディカルサイエンスインターナショナル

・パーソナリティ障害がわかる本 岡田尊司 2006 法研

・ ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 融道男他監訳 2009 医学書院

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