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依存性パーソナリティ障害

F60.7 依存性パーソナリティ障害

Dependent personality disorder

 

疾患の具体例

24歳女性。1年前から付き合っている恋人がおり、彼がいなくては何もできないと信じています。その日着ていく服は何がいいか、食事は何をとればいいか、休日は何をして過ごすかなど、何でもかんでも恋人の意見を聞いて、それに従います。自分は能力がないと信じており、とにかく一人でいることが不安で、仕事中も頻繁に彼にメールを送ります。その恋人が酒に酔って暴力的になっても離れようとせず、別れを切り出されるとしがみついて泣き出します。今の恋人と付き合う直前までは、別の男性に同様の依存行動をとっていました。

 

特 徴

依存性パーソナリティ障害の基本的特徴は、面倒をみてもらいたいという広範で過剰な欲求です。支えを得たいがために、従属的でしがみつく行動に出ます。親や配偶者など、面倒をみてくれる人と離れることを怖がり(分離不安)、自分一人では十分に生活できないと思っています。

ささいなことでも、他の人からの助言がなければ決定できません。例えば、仕事にどの服を着ていくか、傘を持っていくかなども、自分で決められないのです。生活のほとんどの部分で、他の誰か(特定の1人のことが多い)に決めてもらい、責任をとってもらおうとする傾向があります。こうした欲求が、年齢や状況(例:子ども、高齢者、病気など)に相応しい要求を超える場合に、依存性パーソナリティ障害と診断されます。

この障害のある人は、世話をしてもらいたいがために、自分の意見を言い出しにくく、支援してくれる人が間違っていることをしていても、同意しようとする場合があります。離れたくないがあまり、配偶者による暴力など、精神的・肉体的な苦痛をも我慢する人もいます。

自分で何かを計画することが困難ですが、誰かが監督してくれる状況であれば適切に行動できます。その人に見捨てられないように、より有能に振る舞うこともあるかもしれません。世話や支えを得るために、本当は嫌なことを自分が犠牲になってする場合もあります。世話をしてくれる人と離れるのが嫌で、興味や関係のない場所にもぴったりとくっついて行きます。

なお、いつも世話をしてくれている人と一緒にいられなくなった場合(例:恋人との破局、親の死)は、すぐに他の誰かに世話をしてもらおうとするかもしれません。

 

有病率

2001〜2002年に行われた「全米におけるアルコールおよび関連疾患に関する全国疫学調査」によると、依存性パーソナリティ障害の推定有病率は0.49%でした。「全米依存症再調査研究パートU」では0.6%と推定されています。いくつかの研究では、男女の有病率はほぼ同じだと報告されていますが、臨床現場では女性のほうに多く診断されています。

 

経 過

依存性パーソナリティ障害の経過については、ほとんど知られていません。この障害のある患者さんは、依存する人がいない状態が続くと、大うつ病性障害になる危険性があります。しかし、治療によってよくなることが期待できます。

 

治 療

精神療法:

依存性パーソナリティ障害の精神療法は、しばしば成功します。洞察療法は、自分がなぜ依存的な行動をとるかを理解できるようになる可能性があります。治療者の支えによって、依存的ではなくなり、自己主張をしたり、自分を信頼できたりするようになります。行動療法や家族療法、集団療法が用いられており、多くの症例で成功しています。

薬物療法:

依存性パーソナリティ障害によくある不安や抑うつのような特定の症状には、薬物療法が用いられます。パニック発作、もしくは強い分離不安を伴う症例には、イミプラミン(トフラニール)が有効な場合があります。ベンゾジアゼピンとセロトニン作動薬も有効です。抑うつ状態、もしくは引きこもりが精神刺激薬に反応する場合は、それらの薬物を用いてもよいことになっています。

 

診断基準:ICD-10

以下によって特徴づけられるパーソナリティ障害:

  1. 他人に自分の重要な生活上の決定の大部分をしてもらうことを促したり、受け入れたりすること。
  2. 自分の欲求を自分が依存している他人の欲求に従属させること、および他人の意志に過度に従うこと。
  3. 自分が依存している人には、たとえ正当なことであっても要求したがらないこと。
  4. 自分のことが一人でできないという過度の恐れのため、一人でいると不安や無力感を感じること。
  5. 親密な関係をもっている人から見捨てられたり、自分のことを一人でしなければならなかったりすることへの恐れにとらわれること。
  6. 他人からの過剰な助言や保証がなければ、日常生活で決断する能力に限界があること。

関連病像として自分を無力で、不完全で、精力に欠けると感じていることが含まれる。

<含> 無力性、不全性、受動性および自己破滅性パーソナリティ(障害)

 

診断基準:DSM-5

面倒をみてもらいたいという広範で過剰な欲求があり、そのために従属的でしがみつく行動をとり、分離に対する不安を感じる。成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

  1. 日常のことを決めるにも、他の人達からのありあまるほどの助言と保証がなければできない。
  2. 自分の生活のほとんどの主要な領域で、他人に責任をとってもらうことを必要とする。
  3. 支持または是認を失うことを恐れるために、他人の意見に反対を表明することが困難である。 (注:懲罰に対する現実的な恐怖は含めないこと)。
  4. 自分自身の考えで計画を始めたり、または物事を行うことが困難である(動機または気力が欠如しているというより、むしろ判断または能力に自信がないためである)。
  5. 他人からの世話および支えを得るために、不快なことまで自分から進んでするほどやりすぎてしまう。
  6. 自分自身の面倒をみることができないという誇張された恐怖のために、1人になると不安、または無力感を感じる。
  7. 1つの親密な関係が終わったときに、自分を世話し支えてくれるもとになる別の関係を必死で求める。
  8. 1人残されて自分で自分の面倒をみることになるという恐怖に、非現実的なまでにとらわれている。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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