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強迫性パーソナリティ障害

F60.5 強迫性パーソナリティ障害

Anankastic personality disorder

Obsessive-compulsive personality disorder

 

疾患の具体例

33歳、男性。企業の経理部門で働いています。他の誰よりも早く出社し、遅くまで残業していますが、一向に評価されません。彼は完璧にこだわり、計算をしたり書類を作ったりする際、数十回も確認しなければ気が済みません。声に出して読み上げたり、図表のレイアウトを1日中微修正したりしています。締め切りのある書類を期日までに間に合わせたことが一度もなく、他の社員から苦情があがっています。過去に結婚をしていましたが、1年足らずで離婚に至っています。妻の家事や料理に口やかましく小言を言い、家計簿を検閲して1円単位の無駄をしつこく責め、自分の在宅時や、夫婦での外出時には予定通りの行動を強要したため、妻が家を出て戻らなかったのです。

 

特徴

強迫性パーソナリティ障害の基本的特徴は、秩序や完璧主義にとらわれて、柔軟性や開放性、効率性が損なわれることです。「強迫症」と名称が似ていますが別の障害です。強迫症は通常、強迫行為と強迫観念が存在しますが、強迫性パーソナリティ障害の診断基準にはそれがありません。また、「ため込み症」とも似たところがありますが、こちらは物をためることが特に極端である時に診断されます。

強迫性パーソナリティ障害の人は、規則や手順、形式に極端にこだわり、本来の目的を達成できないことが少なくありません。例えば、仕事で報告書を作成する時、いくら書き直しをしても不完全だと感じ、締め切りに遅れます。プライベートでも完璧さにこだわり、例えばチリ一つ残らないように床をいつまでも磨き続けたりします。締め切りや約束の時間に遅れることで周囲に迷惑がかかっていても、あまり気付きません。

また、常に仕事や生産的活動をしていたく、ちょっとした息抜きの時間ももったいないと思っています。家族や友人と行楽に出かけることはほとんどなく、仕事に没頭します。たまに友人らと過ごす時には、スポーツなど型通りにことが進みやすい活動を好みます。自分で入念な計画を練り、他人にまでそれを守るように厳しく求めます。時には、よちよち歩きの幼児に、三輪車で一直線に進むように要求する、など無理難題を言い出すこともあります。

道徳や倫理、自分の価値観にやたら誠実で、融通がききません。自分にも他人にも厳しい行為基準に従わせようとします。ただ、自分自身の間違いについては非常に批判的です。 また、強迫性パーソナリティ障害の人は、しばしば物を集めすぎます。それは自覚していますが、「いつか何かの役に立つだろう」と考え、捨てられないのです。家族は、部屋が古い部品、雑誌、壊れた器具などに占領され、不平を言うかもしれません。

すべて自分のやり方で物事を運びたいため、人に仕事を任せられないのも特徴の一つです。食器の洗い方、掃除の仕方なども、自分のやり方だけが正しいと信じており、他人が違うやり方をするといらだちます。

ほかに、極端に倹約家で、十分な生活費があるにもかかわらず、ずっと低い生活水準を維持する特徴もあります。お金は将来の破局に備えて厳しく管理しています。

 

有病率

強迫性パーソナリティ障害は、最もよく見られるパーソナリティ障害の一つで、推定有病率は2.1〜7.9%の範囲です。男性が女性より多く、年長の子どもによく診断されます。

 

経 過

成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになります。経過はさまざまで予測不能です。時折、強迫観念や強迫行為に発展することがあります。青年期に強迫性パーソナリティ障害だった人が、開放的で温かい愛情のある大人になることもあります。しかし、この障害が統合失調症の前兆だったり、年をとって悪化し、大うつ病性障害になったりすることもあります。

 

原 因

詳しい原因は分かっていませんが、この障害のある人の第一度親族に起こりやすいようです。

 

治 療

他のパーソナリティ障害とは異なり、強迫性パーソナリティ障害の人は自ら苦しんでいることを自覚し、自分から治療を求めます。精神療法は有効ですが、長く複雑になりがちで、逆転移(患者さん側の反応に対し、治療者が過剰な対応をしてしまうなど)の問題がよく見られます。

薬物療法は、クロナゼパム(リボトリール)が重篤な強迫性パーソナリティ障害の症状を軽減します。しかし、強迫性パーソナリティ障害そのものに効果があるかは知られていません。クロミプラミン(アナフラニール)や、フルオキセチンのようなセロトニン作動薬は、強迫的徴候や症状が出現する場合に有効だろうと考えられています。

 

診断基準:ICD-10

以下によって特徴づけられるパーソナリティ障害:

  1. 過度の疑いと警戒の感情。
  2. 細部、規則、目録、順序、構成あるいは予定へのこだわり。
  3. 課題の終了を妨げる完全癖。
  4. 過度の誠実さ、几帳面さ、および娯楽や対人関係を排除するほどの生産性への不適切な没入。
  5. 社会的慣習に対して過度に杓子定規で融通がきかないこと。
  6. 堅苦しさと強情さ。
  7. 他人が自分のやり方に正確に従うよう強要すること、あるいは他人がすることをしぶしぶ承認すること。
  8. 執拗で嫌な思考あるいは衝動の侵入。

<含> 強迫性(compulsive and obsessional)パーソナリティ(障害)

    強迫性(obsessive-compulsive)パーソナリティ障害

<除> 強迫性障害(F42.-)

 

診断基準:DSM-5

秩序、完璧主義、精神および対人関係の統制にとらわれ、柔軟性、開放性、効率性が犠牲にされる広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち4つ(またはそれ以上) によって示される。

  1. 活動の主要点が見失われるまでに、細目、規則、一覧表、順序、構成、または予定表にとらわれる。
  2. 課題の達成を妨げるような完全主義を示す(例:自分自身の過度に厳密な基準が満たされないという理由で、一つの計画を完成させることができない)。
  3. 娯楽や友人関係を犠牲にしてまで仕事と生産性に過剰にのめり込む(明白な経済的必要性では説明されない)。
  4. 道徳、倫理、または価値観についての事柄に、過度に誠実で良心的かつ融通がきかない(文化的または宗教的同一化では説明されない)。
  5. 感傷的な意味をもたなくなってでも、使い古した、または価値のない物を捨てることができない。
  6. 自分のやるやり方通りに従わなければ、他人に仕事を任せることができない。または一緒に仕事をすることができない。
  7. 自分のためにも他人のためにも、けちなお金の使い方をする。お金は将来の破局に備えて貯めておくべきものと思っている。
  8. 堅苦しさと頑固さを示す。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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