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軽度精神遅滞[知的障害]

F70 軽度精神遅滞[知的障害]

Mild mental retardation

 

疾患の具体例

36歳、男性。小学校1年生の頃から学校での勉強について行くことができず、医療機関で軽度精神遅滞と診断されました。そのため、2年生からは特別支援学級に通っていました。適切な教育を受け、身のまわりのことは一通りできるようになりました。高校を卒業後は、倉庫で仕分けをする仕事に就いていましたが、品物の数を数えることが苦手で、失敗が続きました。一見すると障害があるように見ないこともあってか、叱られることが多く、1年で辞めてしまいました。現在は福祉作業所に通っています。

 

特徴

精神遅滞(知的障害)とは、精神の発達が停止あるいは不全の状態で、認知や言語、運動、社会的能力に障害があることを言います。学校での学習や日常の経験から学ぶ精神機能が十分に育たず、学業や仕事、社会参加に適応できない、または難しい状態にあります。純朴で、他者に感化されやすい傾向があるため、だまされたり、身体的・性的虐待の被害に遭ったりする危険性も伴います。場合によっては、本人が意図せずにして犯罪に関与してしまうこともあり得ます。

精神遅滞は、軽度・中等度・重度・最重度の4段階に分かれ、段階によって障害の現れ方などが異なります。 軽度精神遅滞は、いわゆる「IQ」(知能指数)が50〜69の範囲にあたります。主な困難は学校での勉強で、とりわけ読み書きが苦手なケースが多くみられます。情緒や社会性が著しく未熟な場合は、結婚や育児が難しいことも少なくありません。会話する能力や言語は年齢相応に期待されるよりも未熟で、コミュニケーションが難しい傾向があります。相手の話を正確に理解することが難しい可能性があります。

しかし、社会的不利を補うように考案された教育を受けることで、能力を向上させ、小学6年性程度の学力を得ることができます。言語習得が幾分遅れるものの、多くの場合、日常生活に必要な会話ができます。発達の進度が正常よりかなり遅いとしても、食事や洗面、着替え、排泄など身のまわりのことは自分でできます。成人してから仕事に就いたり、結婚し、家族を持ったりする人もいます。学校での勉強はうまくできないとしても、実地の能力が求められる仕事では、潜在的能力を発揮しやすいと言われています。

 

原 因

精神遅滞の原因は多岐にわたり、特定できないことも多いとされます。主立ったものに下記があります。

出生前の病因:遺伝子の病気(例:遺伝子の配列変異またはコピー数多型、染色体疾患)、先天性代謝異常、脳形成異常、母胎疾患(胎盤疾患を含む)や、環境の影響(例:アルコール、他の薬物、毒物、催奇性物質)など。

出生後の要因:低酸素性虚血性傷害、外傷性脳損傷、感染、脱髄性疾患、けいれん性疾患、深刻で慢性的な社会的窮乏、および中毒性代謝症候群や中毒(例:鉛、水銀)など。

 

有病率

精神遅滞の有病率は一般人口の約1%で、年齢によって変化します。女性よりも男性に多く、伴性遺伝子要因や男性の脳損傷に対する脆弱性が、性差の原因かもしれないと考えられています。しかし、報告された研究によって性差は大きく変動します。なお、精神遅滞の中でも、軽度精神遅滞はおよそ85%と、大部分を占めます。

 

経 過

生後、心身が発達する「発達期」のうちに発症します。一般に、未就学の年齢では、社会技能や意思疎通に問題がないように見えます。しかし、年齢を重ねるにつれて、抽象化能力の乏しさや、自己中心的な思考などの認知面での問題が顕著になり、同年代のほかの子どもとの違いがわかるようになります。小学校1〜2年生になる頃に診断される傾向があります。意思疎通がスムーズでなく、自尊心が低く、他者に対して依存的な傾向があるため、成人して仕事の技能を身につけても、社会に溶け込むことが困難だとされています。

 

診断基準:ICD-10

もし適切に標準化されたIQ検査が用いられるならば、50から69の範囲が軽度の遅滞にあたる。言語の理解と使用はさまざまな程度で遅れる傾向があり、自立への発達を妨げる言語使用上の問題は、成人期まで持続することがある。器質的病因は少数の者にのみ確認されるにすぎない。自閉症、その他の発達障害、てんかん、行為障害、あるいは身体障害などの合併症はさまざまな割合で見出される。もしこのような障害が存在するならば、独立にコードすべきである。

 

診断基準:DSM-5

知的能力障害(知的発達症)は、発達期に発症し、概念的、社会的、および実用的な領域における知的機能と適応機能両面の血管を含む障害である。以下の3つの基準を満たさなければならない。

A.臨床的評価および個別化、標準化された知能検査によって確かめられる、論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校での学習、および経験からの学習など、知的機能の欠陥。

B.個人の自立や社会的責任において発達的および社会文化的な水準を満たすことができなくなるという適応機能の欠陥、継続的な支援がなければ、適応上の欠陥は、家庭、学校、職場、および地域社会といった多岐にわたる環境において、コミュニケーション、社会参加、および自立した生活といった複数の日常生活活動における機能を限定する。

C.知的および適応の欠陥は、発達期の間に発症する。

〈重症度:軽度〉

概念的領域

就学前の子ども達において、明らかな概念的な差はないかもしれない。学齢期の子どもおよび成人においては、読字、書字、算数、時間または金銭などの学習技能を身につけることが困難であり、年齢相応に期待されるものを満たすために、1つ以上の領域で支援を必要とする。成人においては、学習技能(読字、金銭管理など)の機能的な使用と同様に、抽象的思考、実行機能(すなわち計画、戦略、優先順位の設定、および認知的柔軟性)、および短期記憶が障害される。同年代と比べて、問題およびその解決法に対して、若干固定化された取り組みがみられる。

社会的領域

定型発達の同世代に比べて、対人相互反応において未熟である。例えば、仲間の社会的な合図を正確に理解することが難しいかもしれない。コミュニケーション、会話、および言語は年齢相応に期待されるよりも固定化されているか未熟である。年齢に応じた方法で情動や行動を制御することが困難であるかもしれない。この困難は社会的状況において仲間によって気づかれる。社会的な状況における危険性の理解は限られている。社会的な判断は年齢に比して未熟であり、そのため他人に操作される危険性(だまされやすさ)がある。

実用的領域

身のまわりの世話は年齢相応に機能するかもしれない。同年代と比べて、複雑な日常生活上の課題ではいくらかの支援を必要とする。成人期において、支援は通常、食料品の買い物、輸送手段、家事および子育ての調整、栄養に富んだ食事の準備、および銀行取引や金銭管理を含む。娯楽技能は同年代の者達と同等であるが、娯楽に関する福利や組織についての判断には支援を要する。成人期には、競争して、概念的な技能に重点をおかない職業に雇用されることがしばしばみられる。一般に、健康管理上の決断や法的な判断を下すこと、および技能を要する仕事をうまくこなせるようになることには支援を必要とする。子育てに一般的に支援が必要である。

※参考文献

『IDC-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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