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小児期の分離不安障害

F93.0 小児期の分離不安障害

Separation anxiety disorder of childhood

分離不安症/分離不安障害

Separation anxiety disorder

 

疾患の具体例

7歳、女児。小学校に入って間もなく、不登校になりました。母親と離れるのが苦痛で、登校を促されると泣いて暴れ、その場から動こうとしません。家の中にいてもべったりと母親にくっつき、母親がトイレに行く時もついて来ます。公園に行っても母親のそばから離れず、「お母さんが見えるところにいないと自分は誘拐される」と訴えます。

 

特徴

WHOの診断ガイドライン「ICD-10」に記載されている「小児期の分離不安障害」は、子どもが親など愛着をもっている存在と離ればなれになることを極度に恐れる障害です。就学前の子どもが親から離れることに不安や恐れを抱くことは正常ですが、それが極端に強く、持続している場合に診断されます。

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では、「分離不安症/分離不安障害」の名称で記載されています。分離不安症のある人は、親など愛着をもっている人と分離された際、過剰な苦痛を繰り返し経験します。その人が死んだり、病気になったり、事故に遭ったりしてしまうのではないかと心配し、いつでも連絡をとれるようにしたいと思います。親と離れたくないため、一人で出掛けたり、一人で家にいたりすることを嫌がります。家の中でも親のすぐ近くにいる”つきまとい行動”をとり、一人で眠ることもなかなかできません。寝ている時も、親と二度と会えなくなるような悪夢をよく見ます。親と離れることが予測される時は、頭痛や腹痛、吐き気などの身体症状が現れることもあります。

この障害があることで、社会的引きこもりになったり、アパシー(感情が鈍く、無気力になる)になったり、遊びや仕事に集中できなくなったりしがちです。子どもの場合は不登校になり、学業困難や孤立を招くこともあります。年齢が低い子どもは、異常な知覚体験(例:誰かが部屋をのぞき込む、恐ろしい生き物が近づいてくる)をしたと訴えるかもしれません。

なお、18歳未満の子どもや青年の場合は、少なくとも4週間の持続、成人は6ヵ月以上持続した場合に診断されます。

 

有病率

アメリカの成人における分離不安症の12カ月有病率は0.9〜1.9%です。子どもでは、6〜12カ月有病率がおよそ4%程度と見積もられています。子どもは男女ともに多く、一般人口では女性のほうに多く見られます。

 

経過

典型的には、寛解と増悪の期間があります。ただし、家族からの分離が起こるかもしれないことへの不安や、分離が起こる状況(例;大学へ行く、愛着のある人と別居する)を避ける行動が、成人になるまで続く人もいます。

 

原因

環境要因:

分離不安症は、喪失体験など大きなストレスのあとに起きる傾向があります。例えば、身内やペットの死、自分や身内の病気、転校、両親の離婚、新しい土地への転居、移民、愛着をもっている人から分離された期間での災害などです。若い成人の場合は、実家から出たり、失恋したり、自分が親になったりすることも原因になります。親の過保護や過干渉も、この障害と関連があるかもしれません。

遺伝要因と生理学的要因:

子どもにおける分離不安症は、遺伝が関係しているかもしれません。6歳の双子における分離不安症の遺伝率は73%で、女児ではいっそう高いと見積もられています。

 

治療

分離不安障害の初期治療には、認知行動療法、家族教育、家族精神療法など、多様な治療が推奨されています。登校拒否のある場合は、登校を促し続けつつ、家族療法を用いることが重要となる場合があります。終日学校にいると圧倒されてしまう子どもの場合は、学校で過ごす時間を徐々に長くする治療計画が必要です。不登校の重症例では、入院が必要なこともあります。治療のためにあえて親と分離したり、声に出して宣言させた行動目標に向けて努力させたりすることもあります。

薬物療法では、SSRIが有効であると分かっています。三環系薬物は心臓への深刻な有害作用が懸念されるため、第一選択薬にはなりません。

 

診断基準:ICD-10

診断の鍵となるのは、愛着の対象(通常両親あるいは他の家族成員)から別れることを中心とした過度 の不安であり、さまざまな状況に関する全般的な不安の単なる一部分ではない。この不安は次のような 形をとりうる。

  1. 強く愛着をもっている人に災難がふりかかるという非現実的な、現実離れした心配に心を奪われる。あるいは彼らが去って戻らないだろうという恐れ。
  2. 迷子、誘拐、入院、あるいは殺されるという災難によって、強く愛着をもっている人から引き離されてしまうという非現実的な心配に心を奪われること。
  3. 分離の恐れのために、(学校での出来事を恐れるというような他の理由からでなく)登校を嫌がり、あるいは拒否し続けること。
  4. 強く愛着をもっている人が近くか隣にいなければ、眠るのを嫌がり、あるいは拒否し続けること。
  5. 1人で家にいること、あるいは強く愛着をもっている人なしで家にいることへの持続的で度の過ぎた恐れ。
  6. 分離に関する悪夢を繰り返す。
  7. 身体症状(悪心、胃痛、頭痛、嘔吐などの)が、強く愛着をもっている人からの分離をともなう状況の際に繰り返し起こること。例えば家を離れて学校に行く場合。
  8. 強く愛着をもっている人からの分離を予想した時、その最中、あるいはその直後に、過度の悲嘆を繰り返すこと(不安、泣くこと、癇癪、みじめさ、無感情、あるいは社会的引きこもりとして現れる)。

分離を伴う状況の多くはまた、他の潜在的なストレスや不安の原因を含んでいる。この診断では、不安を生み出すさまざまな状況に共通する要素が、強く愛着をもっている人からの分離という事情であることを示さなければならない。これは最もふつうには、おそらく登校拒否(あるいは「恐怖症」)と関連して現れる。登校拒否はしばしば分離不安の現れだが、時には(とくに青年期に)そうでないことがある。青年期に登校拒否がはじめて起きた場合は、最初に分離不安が作用しており、そしてその不安が、最初に就学以前から明らかに異常であった場合を除いて、ここに分類すべきでない。これらの診断基準が満たされない時は、この症候群はF93のカテゴリーの1つか、F40-F48のもとにコードすべきである。

 

診断基準:DSM-5

A..愛着をもっている人物からの分離に対する、発達的に不適切で、過剰な恐怖または不安で、以下のうち少なくとも3つの証拠がある。

  1. 家または愛着をもっている重要な人物からの分離が、予測される、または経験される時の反復的で過剰な苦痛
  2. 愛着をもっている重要な人物を失うかもしれない、または、その人に病気、負傷、災害、または死など、危険が及ぶかもしれない、という持続的で過剰な心配
  3. 愛着をもっている人物から分離される、運の悪い出来事(例:迷子になる、融解される、事故に遭う、病気になる)を経験するという持続的で過剰な心配
  4. 分離への恐怖のために、家から離れ、学校、仕事、または、その他の場所へ出掛けることについての、持続的な抵抗または拒否
  5. 1人でいること、または愛着をもっている重要な人物がいないで、家または他の状況で過ごすことへの、持続的な抵抗または拒否
  6. 家を離れて寝る、または、愛着をもっている重要な人物の近くにいないで就寝することへの持続的な抵抗または拒否
  7. 分離を主題とした悪夢の反復
  8. 愛着をもっている重要な人物から分離される、または、予期される時の、反復する身体症状の訴え(例:頭痛、腹痛、嘔気、嘔吐)

B. その恐怖、不安、または回避は、子どもや青年では少なくとも4週間、成人では典型的に6カ月以上持続する。

C. その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、学業的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

D. その障害は、例えば、自閉スペクトラム症における変化への過剰な抵抗のために家を離れることの拒否;精神病性障害における分離に関する妄想または幻覚;広場恐怖症における信頼する仲間なしで外出することの拒否;全般不安症における不健康または他の害が重要な他者にふりかかる心配;または、病気不安症における疾病に罹患することへの懸念のように、他の精神疾患によってはうまく説明されない。

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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