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チック障害

F95 チック障害  Tic disorders

チック症群/チック障害群  Tic disorders

 

疾患の具体例

5歳、男児。自宅の引っ越しに伴い、保育園も変わりました。初めて会う保育士や園児になかなか慣れない様子です。転園から1ヵ月がたつ頃から、やたらとまばたきを繰り返したり、急に首を振ったりするようになりました。保育園のある日だけのことで、休みの日にはみられません。こうした状況が半年以上続いています。

 

特徴

チック障害は本人の意思とは関係なく、突然、体が動いたり声が出たりすることが一定期間続く障害です。通常、児童期から青年期にみられます。自分で症状をコントロールすることは難しいものの、抑えられる場合もあります。

チックには、「運動性チック」と「音声チック」があり、さらに持続時間の長短などによって「単純型」と「複雑型」に分けられます。その境界は明確には定義されていませんが、それぞれによくある症状は以下のとおりです

  • 単純運動チック……まばたき、首を急速にふる運動、肩をすくめる、しかめ顔。
  • 単純音声チック……せきばらい、吠える、鼻をすする、シューという音を出す。
  • 複雑性運動チック……自分を叩いたり、飛んだり跳ねたりする。
  • 複雑性音声チック……特定の単語を繰り返すもの、時には社会的に受け入れられない(しばしばわいせつな)単語を使うもの(汚言)、自分の発した音や単語を繰り返すもの(同語反復)。

このほか、まれに運動チックと音声チックの両方が慢性的にみられる「トゥレット症候群」もあります。

 

有病率

チックは子どもによくみられますが、大抵は一過性です。トゥレット症の推定有病率は、学童期の子どもで1000人あたり3〜8人の範囲です。男性のほうが女性よりかかりやすく、性差は2:1〜4:1の範囲です。

 

経過

チックの発症は、通常4〜6歳の間です。もっとも症状が重くなるのは10〜12歳の間で、青年期になると軽くなることが多くみられます。大人になると、多くは症状が軽減します。しかし、少数の例では大人になっても重度のまま続いたり、悪化したりする場合があります。

また、チックは軽快と悪化を繰り返し、時間とともに障害される筋群と発声が変化します。子どもが成長するにつれて、チックが起こりそうな感覚(前駆的衝動)や、チックのあとに緊張が弱まる感覚が生じる場合があります。

 

原因

気質要因:チックは不安、興奮、強い疲労によって悪化し、落ち着いて集中しているときは改善します。放課後や夜に自宅でくつろいでいるときよりも、学校や仕事で作業に従事しているときのほうが、症状が少ないかもしれません。学校のテストや刺激的な活動に参加する日は、しばしば悪化します。

環境要因:相手の身振りや音声を、意図せず真似する場合があります。権威のある立場の人(例:教師、監督者、警察官)とかかわる際には、問題になるかもしれません。

遺伝要因と生理学的要因:遺伝要因と環境要因はチック症状の表出と重症度に影響します。また、トゥレット症の重要なリスク対立遺伝子と、チック症のある人の家族にみられる遺伝子変異は同じものです。出産の際に生じた合併症、父親の高年齢、低出生体重、妊娠中の母親の喫煙が、チックの重症度の悪化に関連しています。

 

治療

慢性運動性または音声チック障害

精神療法は、チックによって二次的に引き起こされる情緒的な問題を最小限にするために必要な場合があります。行動療法、特に習慣反転治療が効果的であることがわかっています。抗不安薬は成果を上げていません。

一過性チック障害

初期の場合は、チックが自然に消失するか進行、あるいは慢性化するかがわかりません。チックに注意を向けることで悪化する可能性があるため、家族はできるだけチックを無視することが勧められます。しかし、症状が重い場合は精神医学的または小児神経学的な検査が勧められます。治療は、行動療法、特に習慣反転治療が効果的であることがわかっています。よほど重度で生活に支障をきたしていない限り、薬物治療は勧められません。

 

診断基準:ICD-10

チック障害と他の運動性障害との主要な鑑別点は、突発、急速、一過性、限局性という運動の性質、それとともに神経疾患を基礎にもつ証拠がないこと、反復性であること、(通常は)睡眠中は消失すること、随意的に簡単に再現あるいは抑制できること、である。チック障害には律動性が欠如しているので、自閉症児や精神遅滞の一部の例でみられる常同反復運動から鑑別される。同じ障害でみられる衒奇的な運動はふつう、チックでみられるものよりも複雑で多様な運動を含む傾向がある。強迫行動は特に複雑性チックと似ているが、その形式は関与する筋群から決まるのではなく、目的から決まるもの(たとえば何かに触れるあるいは何回もまわるなど)である点で異なっている。しかしながら、この鑑別は時に困難である。

チックはしばしば孤立した現象として起こるが、しかし実にさまざまな情緒障害を伴うことがまれでない。とりわけ、強迫的症候や心気的症候を伴う。しかしながら、特異的な発達遅滞もチックと関連している。

チックに情緒障害を伴ったものと、情緒障害にチックを伴ったものとの間にはっきりと線を引くことはできない。しかしながら、診断は異常度の主たる類型を表すべきである。

 

診断基準:DSM-5

注:チックとは、突発的、急速、反復的、非律動性の運動または発声である。

トゥレット症・トゥレット障害

A. 多彩な運動チック、および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が、同時に存在するとは限らないが、疾患のある時期に存在したことがある。

B. チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している。

C. 発症は18歳以前である。

D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。

持続性(慢性)運動または音声チック症/持続性(慢性)運動または音声チック障害

A. 多彩な運動チック、および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が、同時に存在するとは限らないが、疾患のある時期に存在したことがある。

B. チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している。

C. 発症は18歳以前である

D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。

持続性(慢性)運動または音声チック症/持続性(慢性)運動または音声チック障害

A. 1種類または多彩な運動チック、または音声チックが病期に存在したことがあるが、運動チックと音声チックの両者がともにみられることはない。

B. チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している。

C. 発症は18歳以前である。

D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。

E. トゥレット症の基準を満たしたことがない。

該当すれば特定せよ

運動チックのみを伴う

音声チックのみを伴う

暫定的チック症/暫定的チック障害

A. 1種類または多彩な運動チックおよび/または音声チック。

B. チックの持続は最初にチックが始まってから1年未満である。

C.発症は18歳以前である。

D.この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。

E. トゥレット症または持続性(慢性)運動または音声チック症の基準を満たしたことがない。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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