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2009年度第1回 家族会報/家族教室開催報告

2009年2月1日(日)16:00〜18:00 ハートクリニックデイケア

講 師:高 卓士 /ハートクリニック(医 師)

テーマ:心の病の治療について

2009年第1回の家族教室は、「心の病の治療について」とのテーマで、心療内科や精神科で行われる診断や治療について、当院の医師より、お話をさせて頂きました

心療内科・精神科って何?

みなさんは、心療内科や精神科が、どのような病気(疾患)を対象としているか、ご存じでしょうか?

「心療内科」は、身体疾患のうち発症や経過に心理的や社会的な因子が密接に関与する病気である心身症を主に診療する科です。身体面だけでなく、心理面、社会面も含めた総合的な診療を行います。

日本心身医学会では、“心身症とは,身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する”と定義しています.しかしながら,うつ病や神経症でも身体症状が主な場合、十分な身体的検査と,身体症状と心の両面に配慮した治療が必要です.

そこで実際には,次のような症状をお持ちの方を対象として治療します.

  • 何らかの疾患あるいは症状があり,心理・社会的要因(一般にいうストレス)が,症状の出現や悪化と関連があると考えられる方
  • 胃が痛い・頭痛がする・体がだるいなどの症状があるが、いろいろ検査をしても異常がないと言われた方
  • 食欲が抑えられなかったり,食べることが怖くなったりする方(拒食症,過食症)
  • パニック障害,うつ病などで,精神症状より身体症状が強い方

 

一方「精神科」は、統合失調症やうつ病など、精神疾患、いわば“こころの不調”を対象としています。しかし、実際の臨床現場では、「精神科」と「心療内科」を厳密に使い分けているところはあまりないかもしれません。また、実際では患者さんの受診のしやすさなどを考え、「精神科」を前面に出さず、「心療内科」を看板にしているクリニックも多いのです。

では、「心療内科」と「精神科」に共通している治療の目的は何か、というと、それは“心の病の症状の苦しみを取り除く”ということではないでしょうか。また、“心の病により生じた、その人が困っている事を解決する”ことだといえるでしょう。 そして、その方法として、大きくお薬を使う治療法と、お薬を使わない治療法を使います。

 

心の病って何?

心の病と呼ばれる病気は、医学的には「精神障害(精神疾患)」と言います。  「精神障害(精神疾患)」は、脳の機能的障害(主にこちら)もしくは器質的障害によって引き起こされる病気を指しています。  機能的障害は、神経伝達物質が乱れることにより起こるものを言い、器質的障害は神経細胞に障害が起こるものを言います。

 

どうやって心の病って見分けるの?

人間の脳については、少しずつ分かってきていることもありますが、まだまだ謎だらけ、というのが現状です。  そんな脳の不調(心の不調)を病気かどうか見分けるとき、どんなことが基準となっているのでしょうか。ポイントは3点あります。

  • 不適応(有害な影響)を起こしている
  • 本人が苦痛である
  • 精神科医が「臨床的に明らかに問題」とする
     

精神科での診断では、他科のように、画像で診断するとか、傷口を見て診断するといったことができません。そこで、精神科医が「臨床的に明らかに問題」と判断する際に、個々の医師によって診断にばらつきが出ることを防ぐために、共通の診断基準といったものを用いています(e.g.DSM-W、ICD-10)。こうした診断基準では、簡単に言ってしまえば、統計的なデータから、それぞれの病気に特徴的な症状をいくつもリストアップして、そのうちのいくつが当てはまったら、○○という病気である可能性が高い、といった具合に判断していきます。これらは、極めて操作的で機械的でありすぎる、という欠点はありますが、医師間での共通言語としては非常に有効で、現在は、世界中で使用されています。

 

心の病の原因って何?

さて、心の病気と言われる病気の原因は何なのでしょうか。先に、人間の脳については謎だらけと書きました。したがって、残念ながら、まだまだ心の病の原因は分かっていない部分が多いのです。

何か辛いことが起きたときに落ち込むのは当然ですが、それならば、気分が大きく落ち込むうつ病は、非常に辛い出来事だけが原因かというとそういうわけではありません。うつ病に限らず、心の病には、これ、と言い切れる単一の原因がないのです。また、身体の病気は、たいていの場合、誰においても同じ原因で起こります。最近流行しているインフルエンザを考えてみてください。インフルエンザは、体内にインフルエンザウィルスが侵入して増殖し、組織や臓器を攻撃し始めるという共通の原因とメカニズムが分かっています。しかし、心の病は、それぞれの人の体質的な要因、心理的な要因、社会・環境的要因が複合的に関与して生じます。

体質的な要因は、本人の生まれつき、すなわち遺伝子レベルで決定される病気への親和性(なりやすさ)です。多くの心の病気では脳内の神経伝達物質の働きに問題が生じている事がわかっています。神経伝達物質の働きを決める要素として、神経伝達物質を分解する酵素、神経伝達物質が結合する受容体の構造などは遺伝子レベルで決まるため、本人の生まれつきの要素は心の病気の大きな原因の一つになります。

しかし、心の病気にかかるかどうかは、こうした生まれつきの要因だけで決定されるわけではありません。次のような心理的要因、社会・環境的要因も同様に、いえ、それ以上に重要です。

  • 養育環境、トラウマ
  • 性格
  • 認知(物事のとらえ方)
  • ストレス要因(個人と環境のひずみ)
  • 生活環境の変化     などなど
     

このように、多くの要因が複雑に絡み合って生じる心の病気を治療する上で大切なのは、決して原因探しではありません。何が一番重要かといえば、それは“あらゆる手をつくして、その人の抱える問題を解決すること”なのではないでしょうか。

 

心の病の治療法って?

心の病気の治療、と聞いて、皆さんは何を想像されるでしょうか?心理療法でしょうか?

確かに、心理療法も、心の病の治療法のひとつです。しかし、治療の中心となる方法は、薬物療法、つまりお薬を使った治療です。

現在、心の病気の詳細なメカニズムは不明とは言え、多くの心の病気では脳内神経伝達物質の働きに問題が生じている事が分かっています。例えば、気分が大きく落ち込んでしまい、日常生活に多大な支障が生じる「うつ病」の時は、セロトニンの働きに問題が生じ、また、幻覚や妄想など現実と非現実の境界がぼやけてしまう症状が特徴的な「統合失調症」ではドーパミンの働きに問題が生じている事が分かっています。

そこで、こうした神経伝達物質のバランスを整える目的で、様々なお薬が処方されます。

お薬の力を借りて、患者さんを苦しめている症状を和らげた上で、必要(適応)があれば、心理療法を併用する、というやり方が、多くの場合、効果的であるということがわかっています。

心理療法には種々の方法がありますが、一般に、人間関係でいきづまりが深い場合や、自分自身の心の葛藤や感情のもつれが強い場合に良い適応となります。必要のあるなしは、患者さんご本人の希望と精神科医の判断の両方が必要となります。

一方、心理療法が適さない場合があります。それは、生物学的な病気の場合や症状が重篤な場合、そして、言葉による自己表現が困難な場合、アルコール依存症の場合、更には、患者さん本人がカウンセリングを希望していない場合、などがそれにあたります。

 

リハビリテーション

さて、精神科の治療のもう一つに、「精神科リハビリテーション」というものがあります。

多くの心の病では、病気の症状がある程度軽減されても、様々な問題が残る場合があります。それはちょうど、骨折した箇所の骨がつながっても、急にもとのように動かせないのと似ています。心の病にかかった方の多くは、症状が軽減したのちに、いわば“生活のしづらさ”とでも言えるようなものが残ります。たとえば、人とのコミュニケーションに対する不得手感、生活のリズムが戻らない、趣味の喪失、などなど。

身体的なけがや病気の治療にリハビリが欠かせないように、精神科の治療にもリハビリが必要です。“精神科デイケア”は、そのリハビリテーションを提供する場として存在しています。

精神科デイケアの機能は、以下のようにまとめることができるでしょう。

  • 治療(癒し)の場
  • 居場所(ほっとできる、笑いあえる)
  • 身体を使う、培う場
  • 対人交流、訓練の場
  • 社会参加の場
     

 

まとめにかえて

心の病気については、先に書いたとおり、まだまだ分からないことが多く残されています。むしろ、現代の精神医学はまだ“よちよちあるき”とでもいえるような段階かもしれません。しかし、だからこそ、いろいろな手を尽くして、病気からの回復を図っていきたいものですね。

今後、家族教室では、心の病気それぞれについて、セミナーを実施していきたいと思っています。

ご参加をおまちしております!

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