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ご家族の方へ

2009年度第2回 家族会報/家族教室開催報告

2009年3月1日(日)16:00〜18:00 ハートクリニックデイケア

講 師:小野瀬 博 /ハートクリニック(医 師)

テーマ:中高年のうつ病

2009年第2回の家族教室は、「中高年のうつ病」とのテーマで、気分障害のひとつであるうつ病について、当院に医師より、お話をさせて頂きました。

セミナーでは、参加者の方からの質問に医師がお答えすることに多くの時間を充てましたので、ここでは、うつ病について、疾患の概要や一般的な経過、治療法などについて、ご紹介したいと思います。  なお、当日は、当方の諸事情により、セミナー開始時間が大幅に遅れましたことを、ここに深くお詫び申し上げます。

 

気分障害とは?

気分と意欲が障害される一群の精神疾患を「気分障害」呼んでいます。

私たちは、悲しいことがあれば落ち込んだり、逆に嬉しいことや楽しいことがあれば気分が高揚したりします。これは、ごく自然なことで、私たちの誰もが日常生活の中で経験することでしょう。しかし、その質と量が健康な状態とは異なるとき、それを「気分障害」という名前で呼んでいます。そのうち、うつ状態のみが現れるものを「うつ病」、うつ状態も躁状態も現れるものを「双極性障害」(狭い意味での「躁うつ病」)と呼んでいます。

 

うつ病はどんな病気?

心の病と呼ばれる病気は、医学的には「精神障害(精神疾患)」と言います。  「精神障害(精神疾患)」は、脳の機能的障害(主にこちら)もしくは器質的障害によって引き起こされる病気を指しています。  機能的障害は、神経伝達物質が乱れることにより起こるものを言い、器質的障害は神経細胞に障害が起こるものを言います。

 

どうやって心の病って見分けるの?

うつ病は、「こころのカゼ」と表現されることがよくあるようです。皆さんは、この言葉をどのように受けとっていらっしゃるでしょうか?この言葉は、うつ病が、心がちょっと疲れたときに誰もがかかりうる病気で、決して特殊な人だけがかかる病気ではない、ということを表しています。そういった意味では、この言葉はとても便利で理解しやすい言葉です。しかし、一方では、誤解を招きやすい言葉でもあるようです。うつ病は、放っておくと慢性化しやすい病気です。そして自殺という最悪の事態をまねきかねない病気でもあります。こうしたことから、カゼのようには、気軽に考えることはできない病気なのです。

ただ、1つ言えることは、うつ病は治療すれば必ず治る病気だということです。確かに、病気を治すには、患者さんご自身の「自分で治そう」という主体的な気持が大切ですが、「自分1人で治そう」などと思わずに、うつ病を正しく理解し、専門医の力を借りながら治していくことが、病気を克服する一番の近道です。他の病気と同じように、治療は早いにこしたことはありません。

 

うつ病とうつ状態

気持ちが滅入る、何もする気になれない、悲しいなど、気分が落ち込んだ状態のことを「うつ状態」と言いますが、こうした「うつ状態」はうつ病に特有のものではありません。うつ病にかかっていない人でも、何らかのストレスで気分が落ち込んでいれば「うつ状態」ですし、身体の病気のせいで落ち込みが激しい状態も「うつ状態」、そして、うつ病以外のこころの病気で落ち込みが見られるときも「うつ状態」です。つまり、「うつ状態」は、誰でもが経験するもので、「うつ状態=うつ病」ではありません。

では、誰しもが経験する「うつ状態」と病気としてのうつは、具体的にどう違うのでしょうか?たとえば、日常的なうつ状態であれば、いやいやながらでも職場に行って仕事もでき、主婦なら家事もできます。休んだとしてもせいぜい1日くらいのものですむでしょう。

しかし、うつ病になると、仕事も家事も学校も勉強も、更には食事や入浴といった習慣的な行動さえ、できなくなってしまいます。これは決して面倒だからではなく、「やらなくては」と思いながらもできないために、ご本人は大変つらい思いをするのです。

また、日常的なうつ状態では、物事を悲観的に考えてしまっても、「死のう」とまで思いつめてしまうことは稀でしょう。しかし、うつ病では、「自分は生きる価値がない」と思いこみ、自殺を考えます。

更に、健康な状態では、相当気持ちが落ち込んでいても、原因となっていたことが解決すれば、ある程度気持ちがすっきりするものです。悩みそれ自体が解決できなくても、楽しいことがあったりすると、短時間でも気がまぎれることがあります。ところが、うつ病では、どんなに良いことがあっても落ち込みが解消されることがありません。  このように、私たちが日常的に経験するうつ状態と、うつ病は異なるものなのです。

 

うつ病の症状

うつ病というと、抑うつ気分のような、精神面にあらわれている症状がクローズアップされがちですが、身体面にも症状はあらわれます。ここでは、精神面にあらわれる症状と身体面にあらわれる症状を整理しておきたいと思います。

〈精神面にあらわれる症状〉

●感情面  抑うつ気分、不安感、イライラ感、劣等感、後悔、心配症、人に会いたくない、自責感、自殺念慮

●思考面  思考力減退、悲観的思考、記憶力低下、妄想(心気妄想、罪業妄想、貧困妄想)

●意欲面  億劫、無気力、根気がない、興味・関心の喪失、集中力低下

〈身体面にあらわれる症状〉

全身倦怠感、易疲労、頭重、頭痛、肩こり、筋肉痛、眼精疲労、不眠、過眠、食欲不振、胃部不快感、過食、性欲減退、胸部圧迫感、腰痛、頻尿、口渇、便秘、しびれ感、冷感、関節痛など

こうしたうつ病の症状は“うつ病の四大症状”として(1)抑うつ気分、(2)精神運動制止、(3)不安焦燥感、(4)自律神経症状とまとめて表現されることがあります。

うつ病は、心のエネルギーが低下した(あるいはなくなった)状態と言い換えられるかもしれません。症状が進むと、周囲がどんなに面白く感じることでも、まったく楽しくありません。かといって、悲しくて泣けてくるわけでもない状態になってしまうことがあります。うつ病のひどい状態では、感情の動き自体が低下してしまうのです。

 

うつ病の経過

うつ病の発症から回復までの経過には、ある程度共通したパターンがあるようです。

多くの方が、生活の中で楽しさを感じられなかったり、以前は興味を持っていたものに興味を持てなくなったり、といった前兆ともいえるような症状から始まるようです。また、身体的にもいろいろなところに不調を感じるようになり、やがて悪化すると、気分の落ち込みが激しくなります。更に、重症の時期には身体を起こすこともままならない、といった状態になることがあります。

一方、回復期には、少しずつ興味や関心が戻ってきたり、ものごとを楽しめる感覚が戻ってきます。

 

どういう人が発病しやすい?

うつ病の原因はひとつではなく、様々な要因が複雑に関係しあって発症するようです。しかし、“なりやすい”性格傾向というものもあるようです(こういった性格傾向があるからといって必ず発症するというわけではありません)。  みなさんは「うつ病になりやすい性格傾向」にどのようなイメージをもっていらっしゃるでしょうか?「几帳面・まじめ・責任感が強い・一生懸命に仕事に取り組む」といったイメージをお持ちではないでしょうか?これをもう少し詳しく見てみると、次のような特徴があるようです・・・。

●ものごとの優先順位がつけづらい

私たちは、普段の生活の中で、「まっ先にやること」「あとでやれば良いこと」「明日に回してもよいこと」など、いろいろなものごとに優先順位をつけながら過ごしています。大切なものから順に片付けていけば、たとえやり残したことがあっても、それはそれほど重要なことではないため、結果的には「うまくやった」感覚が残ります。しかし、優先順位をつけられず、片っ端からやっていくと、やり残したことが大切なことだった場合に、結果的には「失敗した」という感覚が残ります。こうしたことがうつ病への“なりやすさ”のひとつを作ると考えられます。

●感情の切り換えができづらい

悔しさや悲しみなどの感情が長く続き、気持ちの切り替えがしにくいと、物事がうまくいかなかったときの気持ちがいつまでも残るため、失敗を恐れる気持ちが強くなり、慎重になります。このことが几帳面さにつながると考えられます。

几帳面さは決して悪いことではありませんが、几帳面さだけで乗り切れないことは多々出てきてしまいます。そのようなとき、几帳面さだけで乗り切ろうとやっきになればなるほど、ストレスは大きくなり、やがてうつ病の発症をまねくひとつの要因となるのです。

 

うつ病の治療

うつ病の治療は、「薬」「休養」「精神療法」の3本立てで行われます。

まずは、「眠れない」「気持ちがふさいでどうしようもない」などといった、辛い症状を和らげるために、薬を服用します。眠れない場合は眠れるように、憂鬱な気分は少しでも晴れるように。ただし、どのような薬がその人に合うがどうか、は、とても個人差が大きいものです。また、すべての薬には副作用がつきものです。診察時の患者さんからの訴えをもとに、医師は薬の量を調節したり、別の薬を処方したりして、徐々にその患者さんに合った薬を処方することができます。その人に合った薬を処方するには、どのような副作用が出たか、効き具合はどうか、などを知ることが、とても重要です。ですから、処方された薬は、よほどのことがない限り、自らの判断で中断することはせず、率直に医師に相談してみましょう。

次に、患者さん自身にぜひ、行っていただきたいのは、心と身体を充分に休めることです。うつ病の治療では、この「休養」がしっかりととれるかどうかが非常に重要です。うつ病はいわば「エネルギー切れ」の状態ですので、再びエネルギーをためるために、この「休養」がかかせません。

症状が軽い場合は、薬を服用しながら、会社や学校、普段の生活を営むことができます。しかし、しばらく休暇をとって安静にした方がいい場合もあります。そもそもうつ病にかかる人の多くは、元来、まじめで責任感が強い人たちです。通常の生活を営みながら、よい意味での「手を抜く」ということが難しい場合があります。そのようなときにも、いっそのこと、しっかりとした休養期間をもつことが必要になります。更に、症状が重篤な場合以外にも、入院治療が行われる場合があります。これは、今ある環境の刺激から患者さんを一時、切り離して、心おきなく休養をとってもらうため、という意味合いでの入院です。

うつ病治療の3本立ての最後は、「精神療法」です。うつ病は、その人の考え方や物事の捉え方、生き方が大きくかかわっている病です。そのため、休息と薬物によって一度病気から回復しても、以前と同じような物事の受け止め方や考え方をしていると、また同じようなきっかけで、うつ病を再発してしまう恐れがあります。そこで、精神療法では、これまでの患者さんの生き方や考え方、物事の受け止め方を整理して、自分のクセを把握し、自分にとってデメリットとなるようなクセを修正する、ということを目指します。つまり、以前と同じことが起こっても、別の考え方や受け止め方ができるよう、予防策を講じておくのです。

うつ病の治療は、半年から1年間くらいかかるのが普通です。しかも、個人差が大変大きく、一概に「全治○ヶ月」などと言うことはできません。うつ病は、一進一退を繰り返して少しずつ治っていく病です。回復の波に身を任せるつもりで、過ごすのがよいでしょう。

 

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