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ご家族の方へ

2009年度第8回 家族会報/家族教室開催報告

2009年9月6日(日)16:00〜18:00 ハートクリニックデイケア

講 師:剱持 慈子 /ハートクリニックデイケア 臨床心理士

テーマ:認知行動療法について

今回の家族教室は「認知行動療法」とのテーマで、当クリニックにおいても実施されている心理療法について、デイケアスタッフ(臨床心理士)より、その基本的な考え方や技法を中心に、お話をさせていただきました。

「認知」とは?

そもそも、この心理療法の名前につけられている「認知」とは、どういったことを意味しているのでしょうか?皆さんは、どのようなものをイメージされるでしょうか?認知行動療法で取り扱われる「認知」が意味するのは、ごく簡単に言うと“ものの見方や考え方”ということです。

私たちは、現実を客観的に見ているようで、実際は自分なりの思い込みで見ていることがずいぶんあります。そして、現実に起こったことを自分なりの解釈で理解して対応しようとするために、実際の現実とずれが生じてきてしまうのです。そのために、少し考えれば簡単に解決できる問題までも、考える前にあきらめてしまったり、どのように解決すればよいかわからなくなったりするようになります。そして、ストレスフルな状況にあるときや、こころに元気がなくなっているときには特に、この「思い込み」は非常に頑なになってしまう傾向があることがわかっています。

そのようなとき、もう一度、なるべく客観的に、柔軟に現実を見つめ直し、問題に対処したり解決できたりするようにするのが、認知行動療法の目指すところです。

 

認知行動療法って?

認知行動療法は、現在、いろいろな疾患に対して、その有効性が実証されています。

日本でも広く行われるようになってきた、この認知行動療法の最大の特徴は、「身につける心理療法であること」ではないでしょうか。

認知行動療法では、治療者と患者さんが、協同(協働)で目標達成を目指します。そして、現在の問題が解決され、面接を終結した後も、患者さんが、認知行動療法を自身で実践し、新たな問題にチャレンジしていけるようになる、ということが最終的なゴールとなります。

これは、患者さんのもっている自助力・対処能力を伸ばし、再発を予防する、ということに繋がります。

認知行動療法の進め方

認知行動療法では、まず、現在、患者さんを取り巻いている状況を把握することから治療を始めます。そして、患者さんの生活体験を次のようなモデルでとらえます。

私たちの感情や行動は、ある出来事に出合うと、瞬間的・直接的に湧き上がってくるように感じられます。しかし、だからといって「出来事」→「感情」・「行動」という単純で直接的な流れではありません。私たちの感情や行動は、「物事の捉え方(=認知)」に影響を受けているのです。ですから、「出来事」→「物事の捉え方(認知)」→「感情」・「行動」という道筋で、私たちのさまざまな感情や行動は生まれてきていると考えられるのです。

認知行動療法では、患者さんの体験ひとつひとつを「モデル」でとらえます。「モデル」でとらえることは、自らの主観的な体験を、具体的に、客観的に理解する手助けとなります。 こうしたモデルをもとに、患者さんにとって現在、問題となっている点がわかってきたら、取り組む目標を具体的に設定します。こうした目標は、治療者が一方的に決定するものではありません。先に書いたように、認知行動療法では、患者さんと治療者は協同(協働)でことにあたります。お互いに話し合い、合意した上で、できるだけ小さな、達成しやすい目標を立て、治療に取り組みます。

目標が決まったら、具体的な技法の選択を行います。数多くある技法の中から、その患者さんに最も適当と思われる技法を選択、組み合わせて利用します。

特に日本では、認知行動療法というと、この後に述べるような「認知再構成法」のイメージが強い(ともすると、「認知再構成法=認知行動療法」と勘違いされていることもあるほど)のですが、実は、認知行動療法はたくさんの技法を組み合わせて(患者さんにとって有益な“道具”は何でも使って)行う心理療法なのです。

技法が選択されたら、その実施に移ります。セミナーでは、最もポピュラーな「認知再構成法」について簡単にご紹介させて頂きました。認知再構成法とは、ある状況における感情、自動思考を同定し、自動思考に検討・修正を加えることによって、感情の変化を促す方法です。 「自動思考」とは、ある状況に対して、無意識に素早く湧いてくる思考やイメージです。認知行動療法では特定の場面・状況(ストレス)において、ネガティブな感情・行動・生理的身体反応が引き起こされるには「自動思考」の影響であると考えます。つまり、自動思考に気付き、検討し、修正することができれば、同じ状況にあってもネガティブな反応を軽減したり、無くしたりすることが可能となるわけです。ストレスを感じる状況で「そのときどんなことが頭に浮かびましたか?」と質問することで、自動思考が把握できるようになります。さらに「そのときどんな気分でしたか?」と考えることで自動思考とネガティブな感情との区別と自動思考が感情に与える影響について患者さん自身が気づけるようになります。

ある状況における自動思考が同定できるようになると、その自動思考を検討するようにします。自動思考の根拠や反証、自動思考にようメリットとデメリットなどを考えるようにします。その結果、より適応的で柔軟で現実的な考え方ができるようになります。これが「認知再構成法」です。この認知再構成法を行うために、非機能的思考記録表(DTR)と呼ばれる道具を使うことが有効です(この非機能的思考記録表の形式は、いろいろなものがあり、治療者が独自に工夫して作っていることが多いようです。セミナーでは、講師が作成した記録表を一例として示しました)。

さらに、認知行動療法では、認知の変容とともに、行動の変容もターゲットとしているため、認知再構成法のような認知に働きかける技法とあわせて、行動的技法も頻繁に用いられます。行動的技法は、問題解決のための技法を習得する方法です。問題解決のために、具体的な行動を計画し、行動実験をおこない、その結果を検証する、というステップを繰り返すという問題解決技法が用いられます。行動的技法に組み込まれるものとしては、たとえば、リラクセーション法、認知行動リハーサル、イメージ法、ロールプレイ、モニタリング、コーピングカード法、暴露法、円グラフ法、イメージ技法、アサーション、社会技能訓練、読書療法、モデリングなどがあります。強迫性障害(OCD)には暴露反応妨害法、パニック障害には曝露法とリラクセーション、特定の恐怖症には曝露法、社会不安障害には曝露法とリラクセーションとアサーション、外傷後ストレス障害(PTSD)には曝露法またはEMDR、全般性不安障害(GAD)にはリラクセーションなどの不安対処法が多く用いられます。

認知行動療法では、技法を実践した後、効果を検証します。ここで、もし、技法が患者さんの問題に適当でないということがわかれば、また別の方法を考えます。もし、最初に設定した目標が達成されていれば、再発予防のために今後(終結後)、起こりそうな問題や障害について治療者と話し合い、あらかじめ対応策を計画しておきます。そこまで行って、終結となります。更に、一定期間をおいて、“フォローアップ”を行います。これは、終結後、患者さんが、その後、認知行動療法で習得したことを用いて問題に対処できているか、そして新たな問題が持ち上がっていないか、などを確認し“フォロー”する面接です。

こうした一連の流れが、認知行動療法の基本的な進め方となります。

どのような技法を用いるにしろ、共通しているのは、(1)セルフ・モニタリング(自己観察)、(2)誤った考えの不合理性に気づき、適応的な考え方を身につける、(3)対処スキルの獲得 の3点です。

 

日常への応用

認知行動療法は、様々な疾患への有効性が実証されている治療法です。しかし、治療として用いるだけではなく、そのエッセンスは日常にも応用が可能です。

ご家族のみなさんも、余裕がなくなってしまったとき、ついつい、悪いことばかり考えて、気分がふさぎこんでしまうことはありませんか?そうしたとき、認知行動療法のエッセンスを思い出してみましょう!

最悪の事態を考えてしまったら、1つ、その真逆の、最良の事態を考えてみましょう。そして、真ん中は何だろう?と考えてみましょう。すこしだけ気分が楽になるかもしれません。また、即効性がなかったとしても、こうして両極端のことを考えて、その真ん中を考えるクセをつけると、自然に物事を柔軟に考えることができるようになります。

是非、ためしてみてください。

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