こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
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患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

     

軽度認知障害

F06-7 軽度認知障害 Mild cognitive disorder

疾患の具体例

75歳女性。この頃、人の名前を思い出せそうとしても思い出せなかったり、少し前に言ったことを繰り返して言ったりすることが増えました。とはいえ、日常生活は何でも自分でできていましたから、本人は「ちょっとおかしいけれど、年相応かな」と思っていました。
それでも家族が心配するため、病院を受診しました。診察をした医師は「認知症ではない」と言いましたが、「軽度認知障害が認められます」と診断しました。

特 徴

軽度認知障害は、認知症のような症状があるものの、認知症の診断基準には当てはまらない状態のことを言います。正常と認知症の中間のような症状です。脳や体の病気に伴って発症することがありますが、脳の神経が障害されているとは限りません。また、身の回りのことは自分でできますが、物忘れなどのために、日常生活に不便が生じることもあります。広い意味では、軽度に認知機能が低下したこの時期の状態を「MIC」(Mild cognitive impairment:MCI)と呼びます。

症 状

主な症状は認知能力の低下です。記憶力が低下したり、物ごとを新たに覚えにくくなったり、あるいは集中力が落ちたりします。医療機関で行う客観的テストでは、異常を示します。

原 因

人によっては、脳や体の病気に先だって、あるいは随伴、続発して症状が表れます。しかし、脳が障害されているとは限らず、明確な原因がわからないこともあります。

症状・経過

元になっている病気が回復することで、軽度認知障害もよくなることもあります。その場合は、元の病気の回復から2~3週間以内に症状が治まると言われています。一方で、回復せずに認知症に移行する場合もあります。

治 療

元となっている病気が治療可能な状況であれば、その病気の治療をします。

診断基準:ICD-10

主な症状は認知作業能力の低下である。それは、記憶障害、学習あるいは集中の困難を含む。客観的テストでは通常異常を呈する。症状は、認知症(F00-F03) 器質性健忘症候群(F04)、あるいはせん妄(F05)の診断ができないようなものである。

診断基準:DSM-5

記載なし

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『認知症予防・支援マニュアル(改訂版)』(厚生労働省)