こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。
器質性パーソナリティ障害
F07.0 器質性パーソナリティ障害 Organic personality disorder
疾患の具体例
62歳、男性。酒に酔って転んだ拍子に強く頭を打ち、急性硬膜下血腫になりました。一時的に意識を失いましたが、手術で一命を取り留めました。その後、徐々に回復してきましたが、家族は「けがをする前と人が変わったようだ」と困ってしまいました。ちょっとしたことですぐに怒ったり、暴力をふるったりするようになったのです。また、周囲と話をするにも、やたら回りくどかったり、必要以上にしつこかったりする時もあります。以前は、身なりに気を遣う方だったのに、最近はだらしなくても平気になりました。本人は何もおかしなことはないと思っていますが、家族の勧めで病院を受診すると、急性硬膜下血腫が原因の「器質性パーソナリティ障害」と診断されました。
特 徴
パーソナリティ障害とは、ものごとの考え方、感じ方、行動などが、平均的な人と違ったパターンを持つ障害のことです。周囲からは、しばしば偏った考え方の持ち主ととらえられ、社会生活を営むうえで難しい場面に遭遇することがあります。考え方や行動の傾向によって、いくつかの種類に分類されています。例えば、自分は特別な存在だと思い込む「自己愛性パーソナリティ障害」、他人の注目を引きたくて演技がかった行動をとってしまう「演技性パーソナリティ障害」などがあります。
「器質性パーソナリティ障害」は症状が多岐にわたります。その場にふさわしくない上機嫌になる人もいれば、ささいなことで怒りを爆発させたりする人。あるいは、無感情になる人もいます。場合によっては、窃盗などの非社会的行動をとる人もます。性欲が減退したり、逆に不適切な場で性的な行動をとろうとしたりするケースもあります。
原 因
脳疾患や脳損傷、脳機能不全の残遺障害あるいは合併障害として生じます。
症状・経過
基礎にある病変の経過にともなって変化します。
治 療
元となっている病気が治療可能な状況であれば、その病気の治療をします。
診断基準:ICD-10
確定診断には、明確な既往あるいは脳疾患、脳損傷あるいは脳機能不全の他の証拠に加えて、次の特徴のうち2つ以上がなければならない。
- 目標指向性で、とくに長期間を要し、満足を先にのばさなければならないような活動を我慢して行う能力の持続的な減弱。
- 動の易変性、浅薄で動機のない陽気さ(上機嫌、不適切な冗談)、易刺激性あるいは短時間の怒りと攻撃性の爆発へと変わりやすいことで特徴づけられる情動的行動の変化。無感情がより支配的な症状である症例もある。
- 欲求と衝動の表出が、その結果や社会的慣習を無視して起こりやすい(患者は、たとえば窃盗、不適切な性的接近、貪食というような非社会的行動にふけったり、容姿にかまわない)。
- 猜疑的あるいは妄想様観念化、および/または単一で、通常は抽象的な主題(たとえば宗教、「正」と「悪」)への過剰な没頭の形式をとる認知障害。
- 言語表出の速さと流れの著しい変化が迂遠、詳細すぎること、粘着性、具体的すぎることとともに現れるという特徴がある。
- 性行動の変化(性欲減退あるいは性嗜好性の変化)。
診断基準:DSM-5
記載なし
※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)