こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
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他に分類されるその他の特定の疾患による認知症
他に分類されるその他の特定の疾患による認知症
(Dementia in other specified diseases classified elsewhere)
他の医学的疾患による認知症、または他の医学的疾患による軽度認知症
(Major or Mild Neurocognitive Disorder Due to Another Medical Condition)
疾患の具体例
65歳女性。若い頃から「甲状腺機能低下症」を患っていました。 皮膚の乾燥や、人より寒さに弱いなどの症状はありましたが、薬である程度コントロールできていました。 しかし、このところ数分前の記憶がなくなったり、自分がいる場所や時間がわからなったりすることが増えました。 病院で検査をするも、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などは該当しません。医師は、持病の甲状腺機能低下症による認知症であると診断しました。
特 徴
認知症は、脳の中の変異だけで起こるわけではありません。その他、さまざまな身体疾病によっても引き起こされます。例えば、肝不全や腎不全、甲状腺機能低下症など、一見、関係がないように感じられる病気でも、認知症の原因になり得るのです。認知症の症状があるのに、アルツハイマー型認知症など、他の精神疾患や神経認知障害の診断基準を満たさない場合、過去の病歴などから「特定の疾患による認知症」と診断します。 原因となり得る病気には、主に下記のようなものがあります。
- ●構造的病変(原発性または続発制脳腫瘍、硬膜下血腫、緩徐に進行するかまたは正常圧の水頭症)
- ●心不全による低灌流に関連した低酸素症
- ●内分泌疾患(甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、低血糖症)
- ●栄養疾患(サイアミンまたはナイアシン欠乏症)
- ●他の感染性疾患(神経梅毒、クリプトコッカス症)
- ●免疫疾患(側頭動脈炎、全身性エリテマトーデス)
- ●肝不全あるいは腎不全、代謝性疾患(クフ病、副腎白質変性症、異常性白質変性症、成人期および小児期のその他の蓄積性疾患)
- ●他の神経学的疾患(てんかん、多発性硬化症)
- ●電気ショックや頭蓋内放射線被ばくといった、まれな中枢神経傷害
なお、それぞれの病気にかかった人の何割が認知症になるかは、『ICD-10』および『DSM-5』に書かれていません。
症状、経過
症状に関しては、他の認知症のように記憶障害が表れたり、見当識障害が生じたりします。
症状の経過は、元となっている病気の進行に応じて良くなったり、悪くなったりするのが典型的です。
元の病気が悪化の傾向を持つ場合(例:二次性進行性多発性硬化症医)、時間の経過にともなって、認知症の症状も悪くなると考えられます。
逆に、元の病気が治療可能な場合(例:甲状腺機能低下症)では、認知症が改善するか、少なくとも進行が止まるでしょう。
治 療
元となっている病気が治療可能な状況であれば、その病気の治療をします。
診断基準:ICD-10
(記載なし)
診断基準:DSM-5
- 認知症または軽度認知障害の基準を満たす。
認知症
- 1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている。 (1)本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという懸念、および
- 本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという懸念、および
- 可能であれば標準化された神経心理学的検査に記録された、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって実証された認知行為の障害。
- 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする)。
- その認知欠損は、せん妄の状態でのみ起こるものではない。
- その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)。
軽度認知障害
- 1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において、以前の行為水準から軽度の認知の低下があるという証拠が以下に基づいている。
- 本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという懸念、および
- 可能であれば標準化された神経心理学的検査に記録された、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって実証された認知行為の軽度の障害。
- 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作は保たれるが、以前より大きな努力、代償的方略、または工夫が必要であるかもしれない)。
- 病歴、身体診察、臨床検査所見から、神経認知障害が物質を除く2つ以上の病因過程の病態生理学的結果であるという証拠がある。
- その認知欠損は他の精神疾患や他の特定の神経認知障害(例:アルツハイマー病、HIV感染)ではうまく説明されない。
※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)