こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
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急性中毒

F1x.0 急性中毒 Acute intoxication

疾患の具体例

20歳男性。大学のサークル仲間と居酒屋で宴会をしていたところ、先輩に命令されてビールを一気飲みしました。最初の1杯目は平気だったのですが、周囲にはやし立てられて二度、三度と繰り返していたところ、突然の嘔吐。その後、壁にもたれたまま意識を失い、呼びかけにも応答しません。
救急車で病院に搬送され、幸いなことに命に別状はありませんでした。医師からは、「急性アルコール中毒」と説明されました。

特 徴

急性中毒とは、なんらかの精神作用物質を使用中、あるいは使用直後に意識レベルや感情、行動などに一過性の障害が生じた状態を言います。代表的なものにアルコールや、精神科で処方される薬物などがあげられます。

原 因

精神作用物質が脳の中枢神経に作用することによって、行動や心理に変化が表れます。多くの精神作用物質は、使用量によって心身に与えるダメージが変わります。例えば、少量のアルコールは行動を大胆にさせるなどの刺激作用を持ちますが、量が増えると焦燥感や攻撃性が表れます。極めて大量の場合には、明らかな鎮静を引き起こし、これが意識喪失などにつながる場合があります。肝臓や腎臓の機能に問題がある人は、少量でも重い中毒症状が表れることがあります。

症状・経過

意識レベルの低下、認知、知覚、感情などが通常とは違う状態になります。例えば、攻撃的になったり、気分が不安定になったり、認知や判断ができなくなったりします。なお、中毒の強さは時間の経過に伴い軽減します。それ以上使用しなければ、やがて消失します。体内の組織損傷やほかの合併症が起こっていない限りは、完全に回復します。

治 療

軽症の場合は安静にして経過観察をします。重症例では、胃の中を洗浄したり、輸液したりして、原因となる精神作用物質を取り除きます。血液透析を行うこともあります。

診断基準:ICD-10

急性中毒は通常、薬物使用量と密接に関連している。例外として、ある種の身体疾患、腎あるいは肝機能不全などに罹患している場合は、少量の物質でも、使用量に相応しない重度な中毒作用が生じることがある。社会的な状況からくる脱抑制もここに入れるべきである。例えば、パーティーやお祭りでの行動上の脱抑制があげられる。急性中毒は、一過性の現象である。中毒の強さは時間の経過に伴い軽減する。それ以上使用しなければ、消失する。組織損傷やほかの合併症が起こっていない限り、完全に回復する。
中毒症状は使用された物質の一時的な作用とは限らない。例えば、精神抑制薬が焦燥感か多動を、精神刺激薬が社会的引きこもりと内向的な行動を引き起こすことがある。大麻や幻覚剤のような物質では予想できない作用が出現することがある。さらに、多くの精神作用物質は使用量が異なると生じる作用が異なることがある。例えば、アルコールは少量では明らかに行動上の刺激作用を持ち、量が増加するに伴い、焦燥感と攻撃性が出現し、極めて大量では明らかな鎮静を引き起こす。

診断基準:DSM-5

記載なし

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)