こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
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大麻離脱
大麻離脱 Cannabis Withdrawal
疾患の具体例
24歳、男性。日常的に大麻を使用しており、強烈な中毒症状が起きていました。そのせいで友人も仕事も失いました。大麻をやめることを決意し、医療機関で治療を受けましたが、大麻を吸わずにいると強い不安感や頭痛、不眠などがあり、イライラしてしまいます。3日ほどで我慢できなくなり、再び大麻を使用しました。すると、不安感や頭痛などは弱まりました。
特 徴
大麻離脱の基本的特徴は、日常的な大麻使用を中止したり、減量したりしたあとに生じる不快な症状です。怒りっぽくなる、神経質になる、落ち着きがなくなる、抑うつ気分などがよく生じます。疲労感やあくびが著しくなる人もいます。初期には食欲減少や不眠が生じたあと、逆に食欲が増したり、過剰な睡眠になったりする反跳期間が現れることもあります。こうした症状によって、仕事や学業、その他の社会生活が困難になります。
症状の重さは、大麻使用障害の重症度と関連します。中等度から重度の大麻使用障害で治療中の人のかなりの割合が、中等度から重度の離脱症状を経験しています。 なお、大麻離脱の症状は、大麻を再び摂取することで弱まります。そのため、大麻をやめようと思っても、なかなか止めることができません。大麻の代わりに他の薬物(例:トランキライザー)を使用し始める人もいます。
有病率
大麻を常習的に使用している人のうち、1/3が大麻離脱を経験したと報告しています。大麻をやめたくて治療を受けている人、あるいは大量の大麻を使用している人では、50~95%が大麻離脱を報告しています。
経 過
ほとんどの症状は、大麻を中止してから24~72時間以内に発症します。一週間以内にピークを迎え、約1~2週間は持続します。睡眠困難は1カ月以上続くこともあります。
原 因
環境要因: 大麻の使用量が多い人は、大麻離脱の有病率や重症度がより高いことがわかっています。また、併存する精神疾患の重症度と、大麻離脱の重症度は関係しているようです。
診断基準:DSM-5
- 大量かつ長期にわたっていた大麻使用(すなわち、通常の場合、少なくとも数カ月間にわたる毎日またはほぼ毎日の使用)の中止。
- 以下の徴候と症状のうち3つ(またはそれ以上)が、基準Aを満たしてから約1週間以内に発現する。
- 易怒性、怒り、または攻撃性
- 神経質、または不安
- 睡眠困難(例:不眠、睡眠を妨げる夢)
- 食欲低下、または体重減少
- 落ち着きのなさ
- 抑うつ気分
- 有意の不快感を引き起こす以下の身体症状のうち少なくとも1つ以上:腹痛、震え/振戦、発汗、発熱、悪寒、または頭痛
- 基準Bの徴候または症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
- その徴候または症状は、他の医学的疾患によるものではなく、他の物質中毒または離脱を含む他の精神疾患ではうまく説明されない。
※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)
皆様へのお願い
非合法薬物などの治療には専門的対応が必要となります。当院ではこれに対応することはできませんので、専門の医療機関(神奈川県立精神医療センター/大石クリニック)をご受診いただけますようお願いいたします。あらかじめご了承ください。