こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
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鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬中毒
鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬中毒 Sedative, Hypnotic, or Anxiolytic Intoxication
疾患の具体例
24歳、男性。1年前から不眠や不安に悩まされ、医師からベンゾジアゼピン系の医薬品を処方されています。ある時、対人的なストレスから自暴自棄になり、その医薬品を大量に服薬して昏睡状態に陥り、救急搬送されました。
特 徴
「鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬中毒」の基本的特徴は、それらの物質を使用中または使用直後に現れる不適切な行動、あるいは心理学的変化です。行動面では、異常に性的な行動をとったり、攻撃的になったり、仕事や社会的な義務を実行できなくなったりします。心理面の変化としては、判断力が低下する、気分が不安定になるなどの症状が起こります。また、アルコールを使用した時のように、ろれつが回らなくなったり、協調運動障害(日常的な動作がうまくできなくなる)や不安定歩行で転んだり、事故を起こしたりする人もいます。重症の場合は記憶を失う(ブラックアウト)ことや、昏迷または昏睡に陥ることもあります。 この障害になる人は、医学的な必要性で鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を処方される人だけでなく、わざと中毒症状になるために医薬品を使う人も含まれます。医薬品を友人や家族から譲り受けたり、いくつもの医療機関を受診して入手したりする人もいます。また、処方された医薬品を用量以上に服用する、多種類の医薬品を一気に服用する、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬をアルコールと一緒に服用するなどのケースもあります。
有病率
鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬中毒の有病率は明らかになっていませんが、これらの物質を医学的な目的以外で使用する人のほとんどは、何らかの中毒症状を示すだろうと考えられます。
治 療
鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を過剰摂取した場合の治療として、胃からの吸収を後らせるために胃洗浄、活性炭の投与が行われます。患者がすでに昏睡状態であれば、バイタルサインおよび中枢神経系の慎重なモニタリングをし、必要に応じてレスピレーター(人工呼吸器)を装着します。通常、過剰摂取から回復するまでは集中治療室(ICU)で入院治療をします。
診断基準:DSM-5
- 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の最近の使用
- 臨床的に意味のある不適応性の行動的または心理学的変化(例:不適切な性的または攻撃的行動。気分の不安定、判断の低下)が、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用中または使用後すぐに発現する。用
- 以下の症状または徴候のうち1つ(またはそれ以上)が、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用中または使用後すぐに発現する。
- ろれつの回らない会話
- 協調運動障害
- 不安定歩行
- 眼振
- 認知の障害(例:注意、記憶)
- 昏迷または昏睡
- その兆候または症状は、他の医学的疾患によるものではなく、他の物質による中毒を含む他の精神疾患ではうまく説明されない。
※参考文献
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)
『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)
皆様へのお願い
非合法薬物などの治療には専門的対応が必要となります。当院ではこれに対応することはできませんので、専門の医療機関(神奈川県立精神医療センター/大石クリニック)をご受診いただけますようお願いいたします。あらかじめご了承ください。