こころのはなし
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他の(または不明の)物質の使用障害
他の(または不明の)物質の使用障害 Other(or Unknown) Substance Use Disorder
疾患の具体例
22歳、男性。料理中に誤ってナツメグを大量に使用し、食べると興奮、幻覚、多幸感を得ました。以来、その感覚を得るためにナツメグを大量に入れたクッキーを作り、食べるようになりました。嘔吐や脱力感を覚える時もありますが、多幸感が欲しいためやめられません。
特 徴
「他の(または不明の)物質の使用障害」は、以下の物質とは関連しない物質の使用障害です。 アルコール、カフェイン、大麻、幻覚薬(フェンシクリジンなど)、吸入剤、オピオイド、鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬、精神刺激薬(アンフェタミン、コカインなど)、タバコ。 この障害を発症しうる物質には、以下が挙げられます。
- ●蛋白同化ステロイド
- ●非ステロイド性抗炎症薬
- ●コルチゾール
- ●抗パーキンソン病薬
- ●抗ヒスタミン薬
- ●亜酸化窒素
- ●アミル、ブチル、またはイソブチルニトライト
- ●ビンロウの実(軽度の多幸症と浮遊感をもたらす植物。多くの文化圏で使用されている)
- ●カワ(鎮静作用、協調運動失調、体重減少、軽度の肝炎、肺の異常をもたらす。南太平洋原産のコショウ科の植物)
- ●カチノン(精神刺激作用をもたらす植物。チャットの木に含まれる物質や合成化学誘導体も含む)
- ●その他、闇取引されている未知の薬物、偽の名前(通称)で呼ばれている違法薬物。
この障害の患者さんは、物質使用によって身体的あるいは精神的に深刻な問題が起きていると知っていても、物質の使用をやめることができません。
有病率
極めて限られたデータによると、他の(または不明の)物質の使用障害の有病率は、アルコール、カフェイン、大麻、幻覚薬、吸入剤、オピオイド、鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬、精神刺激薬、タバコの使用障害より低いようです。
経 過
使用する物質によって経過は多様で、一概には言えません。
原 因
他の(または不明の)物質の使用障害の危険要因や予後要因は、アルーコールやカフェインなどほとんどの物質使用障害のそれと似ています。つまり、その人や家族において何らかの物質使用障害がある、もしくは素行症、反社会性パーソナリティ障害がある、その物質が入手しやすい環境、小児期の虐待または心的外傷、自制心が限定的であること、脱抑制的な行動などが関連している可能性があります。
診断基準:DSM-5
- アルコール;カフェイン;大麻;幻覚薬(フェンシクリジンおよびその他);吸入剤;オピオイド;鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬;精神刺激薬;タバコ、の各カテゴリーのいずれにも分類されない中毒物質の問題となる使用様式で、臨床的に意味のある苦痛が生じ、以下のうち少なくとも2つが、12カ月以内に起こることにより示される。
- その物質を意図していたよりもしばしば大量に、または長期間にわたって使用する。
- 物質使用を減量または制限することに対する、持続的な欲求または努力の不成功がある。。
- その物質を得るために必要な活動、またはその使用に多くの時間が費やされる。
- 渇望、つまりその物質の使用への強い欲求、または衝動
- その物質の反復的な使用の結果、職場、学校、または家庭における重要な役割の責任を果たすことができなくなる。
- その物質の作用により、持続的、または反復的に社会的、対人的問題が起こり、悪化しているにもかかわらず、その使用を続ける。
- その物質の使用のために、重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を放棄、または縮小している。
- 身体的に危険な状況においてもその物質の使用を反復する。
- 身体的または精神的問題が、持続的または反復的に起こり、悪化していることを知っているにもかかわらず、その物質の使用を続ける。
- 耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:
(a)期待する効果に達するために、著しく増大した量の物質が必要
(b)同じ量のその物質の持続使用で著しく効果が減弱 - 離脱、以下のいずれかによって明らかとなるもの:
(a)特徴的な他の(または不明の)物質離脱症候群がある
(b)離脱症状を軽減したり回避したりするために、同じ物質(または密接に関連した物質)を摂取する。
該当すれば特定せよ
寛解早期:他の(または不明の)物質の使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、少なくとも3カ月以上12カ月未満の間、他の(または不明の)物質の使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまりその物質の使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)。
寛解持続:他の(または不明の)物質の使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、12カ月以上の間、他の(または不明の)物質の使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまりその物質の使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)。
該当すれば特定せよ
寛管理された環境下にある:この追加の特定用語は、その人がその物質を入手することを制限された環境下にある場合に用いられる。
現在の重症度を特定せよ
軽度:2~3項目の症状が存在する
中等度:4~5項目の症状が存在する
重度:6項目以上の症状が存在する
※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン