こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
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カフェイン中毒
カフェイン中毒 Caffeine intoxication
疾患の具体例
26歳、女性。夜勤のある仕事で不規則な生活をしていました。仕事中の眠気を抑えるために、毎日のようにエナジードリンクと眠気防止薬を摂取していました。ある日、いつもより眠気が強いように感じ、エナジードリンクを多量に飲むと、ほどなくして嘔吐を繰り返し、脈が激しくなって倒れ込みました。同僚が救急車を要請して搬送されました。
特 徴
カフェイン中毒の基本的特徴は、最近のカフェイン消費量が250mgを十分に超えること。さらに、カフェインの使用中や使用後に落ち着きのなさ、神経過敏、興奮、不眠、顔面紅潮(顔がほてって赤くなる)、利尿、胃腸の不調などの症状が現れることです。1日1g以上のカフェインを消費すると、筋肉のれん縮(けいれん性の収縮)、散漫な思考や会話、頻脈または心拍不整、疲れ知らずの期間、神経運動興奮といった症状も認められます。
子どもや高齢者、あるいはカフェインをあまり摂取したことのない人は、もっと少ない量(例:200㎎)でもこれらの症状が起こるかもしれません。逆に、日常的にカフェインを摂取し続けている人は耐性ができ、高用量のカフェインをとっても症状が起こらないことがあります。
カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶、チョコレートなどの食品だけでなく、市販の鎮痛薬や風邪薬などにも含まれています。数年前から、エナジードリンクや眠気防止薬などによるカフェイン中毒が多数報告されており、中には心肺停止や死亡した例も含まれています。
有病率
一般人口におけるカフェイン中毒の有病率は不明です。アメリカでは人口の約7%がカフェイン中毒の診断基準に合致する機能障害があり、5つもしくはそれ以上の症状があると考えられています。
経 過
カフェインの半減期は4~6時間で、カフェイン中毒の症状は通常1日以内に寛解し、長期間は続きません。しかし、5~10gの超高用量のカフェイン消費は死に至る危険性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。 また、カフェイン中毒からカフェイン誘発性障害(睡眠障害や不安障害)へ発展する人もいます。
原 因
環境要因:
日頃からあまりカフェインをとらない人が急にカフェインの摂取量を増やすと、カフェイン中毒になる可能性が高くなります。
遺伝要因と生理学的要因:
カフェイン中毒には遺伝的要因が関係しているかもしれません。。
診断基準:DSM-5
- 最近のカフェインの消費(典型的には250mgを十分に超える高用量)
- 以下の徴候または症状のうち5つ(またはそれ以上)が、カフェインの使用中または使用後すぐに発現する。
- 落ち着きのなさ
- 神経過敏
- 興奮
- 不眠
- 顔面紅潮
- 利尿
- 胃腸系の障害
- 筋れん縮
- 散漫な思考および会話
- 頻脈または心拍不整
- 疲れ知らずの期間
- 精神運動興奮
- 基準Bの徴候または症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
- その徴候または症状は、他の医学的疾患によるものではなく、他の物質中毒を含む他の精神疾患ではうまく説明できない。
※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)