こころのはなし
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吃音[症]/小児期発症流暢症
F98.5 吃音[症] Stuttering(stammering)
小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害 Childhood-Onset Fluency Disorder(Stuttering)
疾患の具体例
9歳男児。幼い頃から話すのが苦手で、何かを言おうとしても口ごもったり、思うように言葉が出なかったりします。学校での国語の時間に教科書を音読した際、途中で読めなくなってしまい、唇や拳が震えました。以来、音読することが苦痛で、学校生活を楽しめなくなっています。心配した親が医療機関に連れて行くと、「吃音症」と診断されました。
特 徴
吃音は、流暢に話すことが難しく、口ごもったり、途中で話を休止したりすることを特徴とする障害です。子どものうちに発症する場合は「小児期発症流暢症」または「小児期発症流暢障害」と言われます。
乳児期には、一過性の口ごもりなどが普通に見られ、小児期後期や青年期にも流暢に話せないことは普通にあり、話の流暢さを著しく阻害する程度の場合にのみ、障害として診断されます。
うまく話せず、単音、音節、単語を頻繁に繰り返したり、長く伸ばしたりします。人によっては、発音しにくい単語を避けて遠回しの言い方をする人もいます。話を休止するときに、顔や身体が動いてしまう人もいます。まばたきをしたり、唇を震わせたり、頭をふったりなどの運動です。
話すことに不安を感じ、子どもでは学業不振になったり、成人でも職業を遂行できなくなるなど、生活上に困難を生じることもあります。
原 因
小児期発症流暢症の場合は、第一度親族における発症頻度が一般人口の3倍以上です。
経 過
小児期発症流暢症の場合は、罹患者の80~90%が6歳までに発症し、発症年齢の範囲は2~7歳です。典型的には、1つの語句の中の最初の単語、または長い単語の最初の子音を繰り返して発音することから始まります。ある横断的研究によると、65~85%の子ども達が非流暢性から回復するとされています。また、8歳時の重症度が青年期以降の回復または持続の程度に関連すると考えられています。
診断基準:ICD-10
記載なし
診断基準:DSM-5
- 会話の正常な流暢性と時間的構成における困難、その人の年齢や言語技能に不相応で、長期間にわたって続き、以下の1つ(またはそれ以上)のことがしばしば明らかに起こることによって特徴づけられる。
- 音声と音節の繰り返し
- 子音と母音の音声の延長
- 単語が途切れること(例:1つの単語の中での休止)
- 聴き取れる、または無言状態での停止(発声を伴ったまたは伴わない会話の休止)
- 遠回しの言い方(問題の言葉を避けて他の単語を使う)
- 過剰な身体的緊張とともに発せられる言葉
- 単音節の単語の反復(例:I-I-I see hjm)
- その障害は、話すことの不安、または効果的なコミュニケーション、社会参加、学業的または職業的遂行能力の制限のどれか1つ、またはその複数の組み合わせを引き起こす。
- 症状の始まりは発達期早期である[注:遅発性の症例は成人期発症流暢症と診断される]
- その障害は、言語運動または感覚器の欠陥、神経損傷(例:脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷「に関連する非流暢性、または他の医学的疾患によるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない
※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)