こころのはなし

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他の医学的疾患による強迫症および関連症

他の医学的疾患による強迫症および関連症/ 他の医学的疾患による強迫障害および関連障害 Obsessive-Compulsive and Related Disorder Due to Another Medical Condition

疾患の具体例

14歳、女児。A群連鎖球菌感染症にリウマチ熱を合併しました。その後、舞踏様運動(体が勝手に動いてしまう)とともに、著しい強迫観念や強迫行為が生じています。。

特 徴

この障害は、何らかの病気によって、強迫症や関連症の症状が現れることが基本的特徴です。症状には、顕著な強迫観念、強迫行為、外見へのとらわれ、一般的に不要と思われる物のためこみ、抜毛、皮膚むしりなどがあります。
通常の強迫症(原発性)ではなく、他の病気による強迫症であると判断するには、まず、強迫関連症状を起こしうる病気にかかっていることが必要です。また、その病気と強迫関連症状の発症、悪化、消失などのタイミングに関連があること。さらに、通常の強迫症や関連症にしては発症年齢や経過が典型的でないことなども重要なポイントです。

強迫症や関連症を起こしうる病気として、A群連鎖球菌感染が考えられます。「シデナム舞踏病」は、この感染が原因で引き起こされる神経精神障害で、強迫観念、強迫行為、注意欠如および情動不安定が生じる場合があります。この病気の患者さんが強迫症に似た症状を呈した際には、他の医学的疾患による強迫症および関連症と診断すべきと考えられています。

ほかに、溶連菌感染症関連小児自己免疫性神経精神疾患(PANDAS)といって、A群連鎖球菌感染後に現れる疾患もあります。舞踏病や心臓炎、関節炎はありませんが、多様な急性神経精神医学的な症状を伴う強迫観念、強迫行為、および(または)チック症状が現れることが特徴です。 ただ、PANDASはまだ議論の余地のある診断名です。昨今は、PANDASの病因論的な要素を取り除いた小児急性発症神経精神症候群(PANS)、あるいは突発性小児急性神経精神症候群(CANS)と呼ばれることがあります。今後さらなる研究が必要な領域です。

経 過

この障害の発展と経過は、一般的にその基礎となる疾患の経過に追随します。

診断基準:DSM-5

  1. 強迫観念、強迫行為、外見へのとらわれ、ためこみ、皮膚むしり、抜毛、その他の身体に焦点を合わせた反復行動、または強迫症および関連症に特徴的なその他の症状が臨床像として優勢である。
  2. その障害が他の医学的疾患の直接的な病態生理学結果であるという証拠が、既往歴、身体診察所見、または臨床検査所見から得られている。
  3. その障害は、他の精神疾患ではうまく説明できない。
  4. その障害は、せん妄の経過中にのみ起こるものではない。
  5. その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

該当すれば特定せよ
強迫症類似の症状を伴う:強迫症類似の症状が臨床像で優勢である場合 外見へのとらわれを伴う;抜毛が臨床像で優勢である場合 皮膚むしり症状を伴う:皮膚むしりが臨床像で優勢である場合

※参考文献
『『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 (医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』 (メディカルサイエンスインターナショナル)