こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
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他の医学的疾患に影響する心理的要因

他の医学的疾患に影響する心理的要因 Psychological Factors Affecting Other Medical Conditions

疾患の具体例

24歳、女性。幼い頃からぜんそくを患っていました。ある時、重い発作を起こして病院に搬送され、酸素マスクを付けられました。しかし、翌日には酸素マスクを「必要ない」と拒否するようになりました。酸素マスクを付けると閉所に閉じ込められているような不安感に襲われると言います。彼女の母親も一緒になって「酸素マスクは不要」と言い、医師の処置に対する不満を表明しています。

特 徴

「他の医学的疾患に影響する心理的要因」とは、それ以前からある医学的疾患に悪影響を与える心理的・行動的要因のことです。医学的疾患に対して適切な治療が必要なのに、心理的苦痛、人との関わり方、物事への対処の仕方などによって、治療を妨げたり、症状を悪化させたりします。医学的疾患の症状があることを認めない、治療を拒否する、といった行動をとる場合もあります。
よくあるケースは、強い不安感によってぜんそくが悪化する、急性の胸痛があるのに治療の必要性を否定する、などです。 医学的疾患に悪影響を与える心理的要因はさまざまです。例えば、抑うつ、不安、ストレスの強い出来事、対人関係上の問題、もともとのパーソナリティ特性などがあります。悪影響を受ける医学的疾患は、病態生理が明らかなもの(例:糖尿病、がん、冠動脈障害)と、機能性症候群(例:偏頭痛、過敏性腸症候群、線維筋痛症)、特発性の医学的症状(例:痛み、倦怠感、めまい)などがあります。影響の受け方は、すぐに症状や疾患が現れるもの(例:ストレスによるたこつぼ型心筋症)もあれば、慢性的で長期に及ぶもの(例:ストレスによる高血圧症)もあります。
似た症状として、自分の病気に対する心理的苦痛や異常な行動がありますが、それは「他の医学的疾患に影響する心理的要因」ではなく、「適応障害」に分類されると考えられています。

有病率

有病率は明らかになっていませんが、非常によくみられる可能性があります。

経 過

どの年齢でも起こりえます。

診断基準:DSM-5 (過眠障害)

  1. 身体症状または医学的疾患が(精神疾患以外に)存在している。
  2. 心理的または行動的要因が以下のうちの1つの様式で、医学的疾患に好ましくない影響を与えている。
  1. その要因が、医学的疾患の経過に影響を与えており、その心理的要因と、医学的疾患の進行、悪化、または回復の遅延との間に密接な時間的関連が示されている。
  2. その要因が、医学的疾患の治療を妨げている(例:アドヒアランス不良)
  3. その要因が、その人の健康へのさらなる危険要因として十分に明らかである。
  4. その要因が、基礎的な病態生理に影響を及ぼし、症状を誘発または悪化させている。

または医学的関心を余儀なくさせている。

  1. 基準Bにおける心理的および行動的要因は、他の精神疾患(例:パニック症、うつ病、心的外傷後ストレス障害)ではうまく説明できない。

現在の重症度を特定せよ

軽度:医療上の危険性を増加させる(例:高血圧の治療においてアドヒアランスが安定しない)

中等度:基礎にある医学的疾患を悪化させる(例:喘息を悪化させる不安)

重度:入院や救急受診に至る。

最重度:重篤で、生命を脅かす結果になる(例:心臓発作の症状を無視する)

※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)
『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)