こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
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破局的体験後の持続的パーソナリティ変化

F62.0 破局的体験後の持続的パーソナリティ変化 Enduring personality change after catastrophic experience

疾患の具体例

20歳女性。大地震で被災し、知っている人が何人も亡くなる様子を目にしました。自分自身も救出されるまで時間がかかり、長時間にわたって死を意識しました。それから3年が経ち、身体のけがなどは十分に快復しましたが、もともとの明るい性格は一変しました。周囲に対して常に疑い深く、無気力で覇気がなく、仕事もできず、ほぼ1日中、自宅に引きこもっています。心配した親に連れられて医師の診察を受けると、被災体験がトラウマとなり、「破局的体験後の持続的パーソナリティ変化」になったと診断されました。

特 徴

破局的なストレス体験に続いて、最低2年間にわたって持続的パーソナリティ変化が起きる障害です。ストレス体験を受ける前とは違い、世間に対して強い猜疑心や敵対心を持ったり、社会的引きこもりになったり、常に空虚感や無力感を覚えるなどの症状が現れます。やたらとよそよそしい態度をとる人もいます。それらの結果として、人付き合いや仕事、学業に著しく支障を来してしまいます。
ここでいう「破局的なストレス」とは、個人の性格によるうたれ弱さに関係ないほど深刻な体験です。たとえば、強制収容所体験や拷問、大惨事、人質体験、テロリズムの被害など、生命を脅かす状況に持続的にさらされるような極端なものが挙げられます。
人によっては、心的外傷後ストレス障害のあとに、持続的なパーソナリティ変化が起こります。その場合、慢性的で快復可能な後遺症として見なされます。なお、自動車事故のように一時的な強いストレスに続いて生じる長期間のパーソナリティ変化は、この障害には該当しません。最近の研究によると、もともと心理的な脆弱性があると考えられるからです。

診断基準:ICD-10

このパーソナリティ変化は持続的であり、柔軟性を欠く適応障害の特徴を示し、対人的、社会的、および職業的な機能の障害にいたるものでなければならない。通常、パーソナリティ変化は鍵となる情報提供者によって確認されなければならない。診断するためには、以前にはみられなかった、以下のようなパーソナリティ特徴の存在を確かめることが不可欠である。

  1. 世間に対する敵対的あるいは疑い深い態度。
  2. 社会的な引きこもり。
  3. 空虚感あるいは無力感。
  4. よそよそしさ。

このパーソナリティは少なくとも2年間存在していなければならず、それ以前のパーソナリティ障害、あるいは心的外傷後ストレス障害以外の精神障害に起因するものであってはならない(F43.1)。同じような臨床的病像をつくり出す粗大な脳損傷あるいは脳疾患の存在も除外されなければならない。

診断基準:DSM-5

記載なし

※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)