こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

     

サドマゾヒズム

F65.5 サドマゾヒズム Sadomasochism / 性的マゾヒズム障害 Sexual masochism disorder / 性的サディズム障害 Sexual sadism disorder

疾患の具体例

28歳、男性。小学生の頃から、女性が暴力を受けたり、辱められたりしている様子をテレビで見て、性的興奮を覚えていました。中でも、サスペンスドラマなどで、女性が首を絞められるシーンに強い興味がありました。大学生になって以降は、性行為中の暴力行為を実践したいと考えるようになりました。悪ふざけを装って、交際相手の首を絞めたり、辱めの言葉を投げかけたりすることで、強烈な性的興奮を得ていました。しかし、そうした行為が相手に受け入れられず、交際が続かないことも少なくありませんでした。一度、性行為中に首を絞める行為がエスカレートして、相手が気絶したまましばらく回復せず、救急車を呼ぶ事態になりました。その頃から、自分の性的嗜好について悩み、精神科クリニックに相談すると「性的サディズム障害」と診断されました。

原 因

フロイトは、サディズムのある人は去勢不安を持っており、自分にされるだろうと恐れている行為を他者にすることで性的喜びを達すると考えました。一方、マゾヒストのある人は、もともと性交に対して不安や罪悪感を持っているため、オーガズムを達成することができず、身体的・精神的苦痛によってその状態が軽減されると考えられています。

経 過

ある研究によると、マゾヒズムが始まる平均年齢は19.3歳と報告されています。しかし、マゾヒズム的な空想を抱き始める年齢はより早く、思春期や小児期も含まれると考えられています。サディズムの開始年齢については、わかっていません。 マゾヒズムもサディズムも、本人の主観的な苦痛(罪悪感、羞恥心、強烈な性的欲求不満、孤独)や、時間の経過と共に症状が変化する可能性があります。ほかのパラフィリア的な性行為と同じように、マゾヒズムもサディズムも、年齢を重ねることによって軽減していく傾向があると言われています。

診断基準:ICD-10

記載なし

診断基準:DSM-5

(性的マゾヒズム障害〉

  1. 少なくとも6ヵ月間にわたり、辱められる、打たれる、縛られる、またはそれ以外の苦痛を受ける行為から得られる反復性の強烈な性的興奮が、空想、衝動、または行動に現れる。
  2. 同意していない者に対してこれらの性的衝動を実行に移したことがある。またはその性的衝動や空想のために臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、またはほかの重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

(性的マゾヒズム障害〉

  1. 少なくとも6ヵ月間にわたり、他者への身体的または心理的苦痛から得られる反復性の強烈な性的興奮が、空想、衝動、または行動に現れる。
  2. 同意していない者に対してこれらの性的衝動を実行に移したことがある。またはその性的衝動や空想のために臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、またはほかの重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)