こころのはなし
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カフェイン使用障害
カフェイン使用障害 Caffeine Use Disorder
特 徴
カフェインをとりすぎると、心臓、腹部、泌尿器系など身体的な問題と、不安、抑うつ、不眠、過敏症、思考の困難といった心理学的問題が生じることがあります。「カフェイン使用障害」は、身体や心によくない影響をもたらすと知りながらも、カフェインの摂取をやめられない障害です。この障害の基準を満たす人は、日常的にさまざまなカフェイン含有製品(例:コーヒー、ソフトドリンク、お茶)や、カフェイン含有医薬品を使用します。
ある調査では、カフェインを使用する人の45%が、カフェインを控えることの失敗を経験しており、18%が離脱、8%が耐性、28%が意図していた以上の使用を経験し、19%が抗いがたいカフェインへの欲求があることを報告しています。また、1%未満はカフェインによって社会生活に支障を来しているそうです。ここ数年、日本国内では若者がカフェイン入り栄養剤(例:エナジードリンク)を乱用することが社会問題になっています。
※注意 ここに掲載した一連の基準は臨床現場で用いるためのものではありません。DSMの公式の精神疾患診断として採用するには証拠が不十分ですが、今後の研究のために専門家によって示され、検討されている案です。
有病率
一般人口におけるカフェイン使用障害の有病率は明らかになっていません。しかし、一般人口におけるカフェイン使用者の14%が、害があるとわかっていながらカフェインを使用しています。さらに、そのほとんどが、医師やカウンセラーに1年以内にカフェインを中止または減量するよう助言されています。
経 過
カフェインの消費率や全体量は30代前半から半ばまでは年齢とともに増加する傾向にあり、その後は下降します。
原 因
環境要因:
生前に故人への依存が高い場合や、子どもが亡くなった場合に、この障害のリスクが高まります。
遺伝要因と生理学的要因:
カフェインの重度の使用、耐性および離脱の遺伝率は35~77%の範囲です。カフェインとタバコ使用障害は併発しやすく、これらは共通の遺伝要因の影響を強く受けていると考えられています。
診断基準:DSM-5
臨床的に意味のある機能障害や苦痛を引き起こすカフェイン使用の不適応的な様式で、以下の基準の少なくとも最初の3つが12カ月の期間内に起こることによって示される。
- カフェイン使用を減らしたり制限しようとする、持続的な欲求または努力が不成功であること。
- 身体的または精神的問題がカフェインによって持続的または反復的に起こるかまたは悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、カフェイン使用を続ける。
- 離脱、以下のいずれかによって示されるもの:
(a) カフェインに特徴的な離脱症候群がある。
(b) 離脱症状を軽減したり回避したりするために、カフェイン(または、密接に関連した物質)を摂取する。 - カフェインをはじめのつもりより大量に、またはより長い期間、しばしば摂取する。
- 仕事、学校、または家庭における主要な役割義務を果たすことの失敗につながる反復的カフェイン使用(例:カフェイン使用か離脱に関連した、仕事または学業における繰り返される遅刻あるいは欠席)
- 以前にカフェインにより引き起こされたか悪化したと考えられる、持続的または反復する社会的または対人関係の問題(例:使用による結果、医学的問題、費用についての配偶者との口論)があるにもかかわらず、カフェイン使用を続ける。
- 耐性、以下のいずれかにより定義されるもの:
(a)希望の効果を得るために、著しく増大した量のカフェインが必要
(b)同じ量のカフェインの継続的使用により、著しく効果が減弱 - カフェインを得るために必要な活動、カフェイン使用、またはその作用からの回復に費やされる時間の大きいこと。
- 渇望、つまりカフェイン使用への強い欲求、または衝動。
※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)