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インターネットゲーム障害

インターネットゲーム障害 Internet Gaming Disorder

特 徴

「インターネットゲーム障害」は、ゲームの使用を自分でコントロールできなくなる障害です。インターネットゲームが日々の生活の中での主要な活動になり、やめようと思ってもやめられません。アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』の「物質関連障害および嗜癖性障害群」では、物質以外を原因とする障害として「ギャンブル障害」が含まれていましたが、それに近い障害としてインターネットゲーム障害を加えることが検討されています。2018年に公表されたWHO(世界保健機関)の国際疾病分類『ICD-11』に「ゲーム症(障害)」が含められたことで、注目されている障害でもあります。
インターネットゲーム障害のある人は、1日8~10時間、あるいはそれ以上(週あたり30時間以上)もインターネットゲームに費やします。その時間は次第に長くなり、食事や睡眠をとらずにゲームをする人もいます。インターネットゲームに心を奪われて過去のゲームのことをずっと考えていたり、他の活動に対する興味を失ったりします。インターネットゲームができない状況になるとイライラしたり、不安あるいは悲しさを感じたりといった「離脱症状」が起こることもあります。
否定的な気分(例:無力感、罪責感、不安)から逃れるためにインターネットゲームをする人もいます。インターネットゲームをすることで、大事な交友関係を失ったり、仕事や学業がおろそかになったりもします。家庭内での役割を果たすよう求めたり、仕事や学業などに再び向かうように言ったりすると強く抵抗します。
典型的には、他のプレイヤーと集団で参加するインターネットゲームで、この障害になります。プレイヤーは世界各国におり、それぞれ時刻が異なるため、長時間プレイになりがちです。仮に「夜になったからやめよう」と思っても、相手の国が昼間であれば、自分だけチームを抜けられない気持ちになるのです。しかし、ゲームを続ける理由を聞くと、コミュニケーションや情報収集ではなく「退屈しのぎ」と答えるケースが多いようです。
強迫的(何かに追い立てられるように)インターネットゲームをすることで、健康が害されることがあります。うつ病、注意欠如・多動症、強迫症が併存する可能性もあります。
なお、ギャンブルを目的としたインターネットゲームは、インターネットゲーム障害から除外されます。また、性的なインターネットゲーム、仕事や娯楽のための過剰なインターネット使用も含まれません。一方、インターネットとつながっていない(オフライン)ゲームで、インターネットゲーム障害と同様の障害が生じる可能性はあります。新たなゲームの開発や、流行するゲームの変化によって、この障害を引き起こすゲームも変わっていくと思われます。

※注意 ここに掲載した一連の基準は臨床現場で用いるためのものではありません。DSMの公式の精神疾患診断として採用するには証拠が不十分ですが、今後の研究のために専門家によって示され、検討されている案です。

有病率

インターネットゲーム障害の有病率は不明ですが、アジア諸国、および12~20歳の男性に多いと考えられています。ヨーロッパや北米からの報告はより少なく、有病率も報告によってさまざまです。

原 因

環境要因:
インターネットに接続できるコンピュータが利用できることは、インターネットゲーム障害ともっとも高い関連性をもつ種類のゲームを利用可能とします。

遺伝要因と生理学的要因:
青年期の男性はこの障害になるリスクがもっとも高い群と考えられています。アジアの環境、遺伝的背景が関連していると推測されていましたが、今も明確ではありません。この障害に共通する性格の分類は確認されていませんが、抑うつ障害、注意欠如・多動症、強迫症などと関連しているという説があります。

診断基準:DSM-5

臨床的に意味のある機能障害や苦痛を引き起こす持続的かつ反復的な、しばしば他のプレイヤーとともにゲームをするためのインターネットの使用で、以下の5つ(またはそれ以上)が、12カ月の期間内のどこかで起こることによって示される。

  1. インターネットゲームへのとらわれ(過去のゲームに関する活動のことを考えるか、次のゲームを楽しみに待つ;インターネットゲームが日々の生活の中での主要な活動になる) 注:この障害は、ギャンブル障害に含まれるインターネットギャンブルとは異なる。
  2. インターネットゲームが取り去られた際の離脱症状(これらの症状は、典型的には、いらいら、不安、または悲しさによって特徴づけられるが、薬理学的な離脱の生理学的徴候はない)。
  3. 耐性、すなわちインターネットゲームに費やす時間が増大していくことの必要性。
  4. インターネットゲームにかかわることを制御する試みの不成功があること。
  5. インターネットゲームの結果として生じる、インターネットゲーム以外の過去の趣味や娯楽への興味の喪失。
  6. 心理社会的な問題を知っているにもかかわらず、過度にインターネットゲームの使用を続ける。
  7. 家族、治療者、または他者に対して、インターネットゲームの使用の程度について嘘をついたことがある。
  8. 否定的な気分(例:無力感、罪責感、不安)を避けるため、あるいは和らげるためにインターネットゲームを使用する。
  9. インターネットゲームへの参加のために、大事な交友関係、仕事、教育や雇用の機会を危うくした、または失ったことがある。

注:この障害には、ギャンブルではないインターネットゲームのみが含まれる。ビジネスあるいは専門領域に関する必要性のある活動のためのインターネット使用は含まれないし、他の娯楽的あるいは社会的なインターネット使用を含めることを意図したものではない。同様に、性的なインターネットサイトは除外される。

現在の重症度を特定せよ
インターネットゲーム障害は、普段の活動の破綻の程度により、軽度、中等度、または重度とされうる。重症度の低い人は症状の数が少なく、生活上の破綻も少ないかもしれない。重度のインターネットゲーム障害をもつ人は、より多くの時間をコンピュータ上で過ごすであろうし、よりひどく、交友関係や、職歴もしくは学業面での機会を失うであろう。

※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)