こころのはなし
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特異的会話構音障害/語音症/語音障害
80.0 特異的会話構音障害 Specific speech articulation disorder 語音症/語音障害 Speech sound Disorder
疾患の具体例
7歳、女児。乳児の頃から言葉が遅く、今でも話すことが苦手です。言葉の意味は理解し、他の子どものように話そうとするのですが、なぜかうまく発音できなかったり、舌足らずになったりします。学校での授業で、教科書を音読させられることが苦痛で仕方ありません。心配した親が病院につれていくと「特異的会話構音障害」と診断されました。
特 徴
特異的会話構音障害は、子どもが年齢に即した言葉を発することが難しい障害です。言語能力そのものは正常な水準にありますが、声を出して言葉を組み立てることがうまくできない状態にあります。語音症、語音障害とも言われます。言葉として声を組み立てるには、語音(言葉の音)を正確に理解し、会話のための呼吸や発声が正常にできることが必要です。発声には、構音器官(顎、舌、唇)をちょうどよく動かす能力が求められます。特異的会話構音障害の子どもは、それらに困難が伴っています。周囲とのコミュニケーションが難しく、学業不振や仕事への支障などが生じることがあります。
経 過
言語の発達には個人差が大きく見られますが、通常、7歳までにはほとんどの言葉を明瞭に発音することができるようになります。しかし、特異的会話構音障害の子どもは、7歳になっても舌足らずな発音だったり、口から空気が漏れるような発音だったりして、うまく話すことができません。しかし、ほとんどの場合、適切な治療を受けることで改善し、会話の困難は次第に減っていきます。障害が生涯にわたるものではないかもしれません。
治 療
言語聴覚士によるリハビリテーションなど。
診断基準:ICD-10
それぞれの話音の獲得年齢とその音の発達の順序には、かなりの個人差がみられる。
正常な発達
4歳では話音の発生の誤りはふつうであるが、知らない人でも容易に理解することができる。6歳から7歳までにほとんどの話音は獲得される。正確な音の配合はまだ難しいかもしれないが、コミュニケーションに支障を来すことはない。11歳から12歳までにはほとんどすべての話音を使いこなす能力が獲得される。
異常な発達
常な発達とは、話音の獲得が、以下のような遅滞および/または偏りのある場合である。構音の誤りがあり、その結果他人がその会話内容を理解できない。話音の省略、歪み、あるいは置き換え、語音の同時生起の際の不一致(すなわち、ある語の位置では正しく音韻を発することができるが、他の位置ではできない)。
診断は以下の場合のみくだすべきである。構音障害の程度がその小児の精神年齢の正常な変異の範囲を超えている。非言語的知能は正常範囲内にある。表出性および受容性言語能力は正常範囲内ある。構音の異常は感覚、構造あるいは神経学的異常に直接起因していないこと。そして発音の誤りは、その小児の属する世界での日常の話し方と照らし合わせても明らかに異常である。
診断基準:DSM-5
- 会話のわかりやすさを妨げ、または言語的コミュニケーションによる意思伝達を阻むような、語音の産出に持続的な困難さがある。
- その障害は効果的なコミュニケーションに制限をもたらし、社会参加、学業成績、または職業的能力の1つまたは複数を妨げる。
- 症状の始まりは発達期早期である。
- その困難さは、脳性麻痺、口蓋裂、聾、難聴などのような先天性または後天性の疾患、頭部外傷、他の医学的疾患または神経疾患などによるものではない。
※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)