こころのはなし
こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
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統合失調症を伴わない急性多形性精神病性障害
F23.0 統合失調症を伴わない急性多形性精神病性障害 Acute polymorphic psychotic disorder without symptoms of schizophrenia
疾患の具体例
28歳、女性。専業主婦として、毎日、家事や育児にいそしんでいました。あるときから気持ちが不安定で、これといった原因もないのに不安を感じたり、逆に「自分は幸せだ」「何でもできる人だ」と強く思い込んだりするようになりました。もともと控えめな性格で、これまで精神疾患になったことはないだけに、異様なまでの気まぐれに家族が心配に思うほどです。症状は徐々に悪化し、女性自身も混乱して、自分の気持ちがわからなくなってしまいました。病院を受診すると、「統合失調症を伴わない急性多形性精神病性障害」と診断されました。
症 状
幻覚や妄想、知覚障害など多様な症状が、日々あるいは時々刻々と変化します。突然、多幸感や恍惚感を覚えて機嫌よく過ごしていたかと思うと、急激に不安感をおぼえたり、物事に過敏になったりとまったく正反対の感情に包まれることがあります。感情の揺れは極めて不安定で、多幸感や不安感が大きくなったり、小さくなったりもします。あまりに感情の移り変わりが激しいため、患者本人も混乱したり、落ち着かなくなったりすることがよくあります。
原 因
症状は突発的に現れますが、その後、急速に消えていくことが多いのが、この障害の特徴です。症状が3ヵ月以上も続くようならば、診断を変更する必要があります。その場合は、「持続性妄想性障害」か、他の非器質性精神病性障害が適切だと考えられています。
予 後
再発率は高いものの、ほとんどの人は予後が良好です。症状の持続期間は、1日以上1ヵ月未満で、最終的には病前の機能レベルまで完全に回復します。中には持続期間が2~3日と極めて短い人もいます。残念なことに、早急な回復を望めない患者もわずかに存在しますが、早期に予見することは不可能だとされています。
診断基準:ICD-10
確定診断のためには、以下のことが必要である。
- 発症は急性(非精神病状態から明らかな精神病状態にいたるまでの期間が2週間以内)でなければならない。
- 型と強度のいずれにおいても日々あるいは同じ日の中でも変化する、いくつかのタイプの幻覚や妄想が存在しなければならない。
- 同様に変化しやすい情動状態が存在しなくてはならない。 (d)症状が多様であっても、統合失調症や躁病やうつ病エピソードの診断基準を十分な確実さをもって満たすものは何も存在してはならない。
診断基準:DSM-5
記載なし
※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)