こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
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妄想型統合失調症

F20.0 妄想型統合失調症 Paranoid schizophrenia

疾患の具体例

22歳、女性。幼い頃から親との折り合いが悪く、いつも厳しく批判されてきました。事務職員として企業で働いていますが、上司や同僚がいつも自分を悪く言っていると思います。一人でいるときも、笑われている声が聞こえます。また、仕事中、誰かに見張られている気もします。周囲の人は誰も信用できません。一方で、自分の本当の親はテレビで見る有名俳優に違いなく、いつか自分も華やかな世界に行くに決まっていると信じています。

症 状

統合失調症は、妄想型、解体型(破瓜型)、緊張型、残遺型、鑑別不能型など、いくつかのタイプに分類されます。そのうち妄想型統合失調症は、もっとも多く見られ、比較的、症状が軽いことのあるタイプです。幻覚や幻聴などの症状が顕著で、被害的または誇大妄想が特徴的とされています。通常、感情や意欲、会話などの障害はそれほど強くはありません。ただ、ほかのタイプほどではないものの、刺激に敏感になったり、怒りっぽくなったり、恐怖感や猜疑心を抱きやすくなります。時に、敵対的あるいは攻撃的になります。それでも、社会状況に合わせて適切に振る舞うことができます。知能は障害されず、完全なまま残る傾向があります。

特 徴

妄想型統合失調症の発病時期は、解体型(破瓜型)や緊張型より遅い傾向にあります。20代後半から30代で初めて発病した患者は、それまで社会生活を営んできた経験があるため自我の源泉が豊かで、精神機能や情緒反応などの障害は少なめです。

経 過

症状が部分的に消えたり、完全に消えたりすることもあれば、慢性化することもあります。慢性の例では、何年にもわたってさまざまな症状が現れます。

診断基準:ICD-10

統合失調症の診断のための一般的な基準(F20の序論を参照)を満たさなければならない。さらに幻覚および/または妄想が顕著であるが、感情、意欲、会話の障害、緊張病性の症状は比較的目立たないものでなければならない。幻覚は、通常、下記の(b)(c)にあげた種類のものである。妄想はどのような種類のものでもありうるが、支配され、影響され抵抗できないという妄想、およびさまざまな種類の迫害を受けているという確信が最も特徴的である。

  1. 考想化声、考想吹入あるいは考想奪取、考想伝播。
  2. 支配される、影響される、あるいは抵抗できないという妄想で、身体や四肢の運動や特定の思考、行動あるいは感覚に関するものである。それに加えて妄想知覚。
  3. 被害妄想、関係妄想、高貴な生まれである、特別な使命を帯びている、身体が変化したという妄想、あるいは嫉妬妄想。
  4. 患者を脅したり患者に命令したりする幻声、または口笛の音、ハミングや笑い声という言語的形態でない幻聴。
  5. 幻嗅や幻味、あるいは性的かほかの身体感覚的な幻覚、幻視が出現することはあるが、優勢となることはまれである。

診断基準:DSM-5

記載なし。

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)