睡眠時遊行症(夢遊病)|こころの病気のはなし 一般編

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心の病気の種類

睡眠時遊行症(夢遊病)

● 症状

「睡眠時遊行症」は夢遊病とも呼ばれ、睡眠中にねぼけながら活動することを繰り返す障害です。ノンレム睡眠という深い眠りの最中に身体が動くため、アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』では「ノンレム睡眠からの覚醒障害」という名称で分類されています。ノンレム睡眠からの覚醒障害には、睡眠中に突然泣いたり大声をあげたりする「夜驚症」も含まれます。

 

睡眠時遊行症の症状は実にさまざまです。ベッド上で起き上がり、あたりを見回したり毛布をギュッとつかんだりするだけのこともあれば、ベッドから離れてクローゼットに入ったり、部屋を出たりすることもあります。トイレを使ったり、他の人と話したりするかもしれません。クローゼットやくずかごに放尿することもよくあります。また、上階から窓の外に落ちる、車道に飛び出すなどして負傷する例も報告されています。睡眠時遊行の最中は痛みを感じにくいため、覚醒するまでけがに気づかないこともあります。

 

特殊な例として、「睡眠関連食行動」と「睡眠関連性行動」があります。前者は、眠っている最中に何かを食べます。眠りながら食べていることは本人の意識になく、翌朝、食べちらかしたあとを見て気がつくことがあります。睡眠関連性行動は、眠っている最中に自慰、愛撫、痴漢、性交といった性的な行為をすることです。男性に多く、対人関係上の重大な問題となるほか、法的責任を問われる可能性もあります。

 

通常、睡眠時遊行症は、主な睡眠時間帯の最初の1/3に起きます。昼寝など補助的な睡眠時にはあまり起きません。症状は1〜10分と短時間ですが、1時間に及ぶこともあります。目は開いてうつろな表情で活動し、他人が覚醒させようとしてもあまり反応しません。無理やり覚醒させるとしばしば錯乱状態になり、攻撃的な行動に出る場合もあります。そのため、大声で呼びかけたり揺さぶったりして起こそうとするのではなく、ベッドに戻るよう穏やかに促すのが望ましいとされています。

 

眠時遊行が終わったあと、患者さんは少しの時間、困惑します。見当識(時間、場所、状況等の認識)が難しくなることもありますが、しばらくすると認知機能は完全に回復し、適切な行動をとります。覚醒してから睡眠時遊行中のことを思い出そうとしても難しく、できたとしてもわずかに限られます。

 

有病率は子どもに高く、4〜8歳がピークです。通常は青年期以降に自然消失するため、大人の睡眠時遊行症はまれです。毎晩、毎週のように症状があり、本人や家族の安全が脅かされるような重症例は、治療が必要と考えられます。

 

●他の病気との関係

悪夢障害との違い

悪夢障害は、簡単かつ完全に覚醒するのが一般的です。生き生きとした物語風の夢を報告することが多く、症状は夜の後半に生じる傾向があります。通常、悪夢は浅い眠りの「レム睡眠」時に生じる点でも、睡眠時遊行症と異なります。

 

呼吸関連睡眠障害群との違い

睡眠中の呼吸障害でも、覚醒時してから混乱や健忘が生じることがあります。しかし、呼吸関連睡眠障害は、いびきや呼吸停止、昼間の眠気と言った特徴的な症状が現れます。ただ、中には呼吸関連睡眠障害が睡眠時遊行の原因になるケースもあります。

 

レム睡眠行動障害との違い

レム睡眠中に大声をあげたり、夢の中と同じ行動をとったりする障害です。睡眠時遊行症と異なって覚醒しやすく、目覚めたあとは夢の内容を詳細に報告することが特徴的です。

 

睡眠関連てんかん発作との違い

夜間てんかん発作は、ノンレム睡眠からの覚醒障害と非常に似ていることがありますが、単純な行動を繰り返す傾向(常同症的)があり、夜間に何度も生じることもあります。また、昼寝でも生じます。

 

アルコール誘発性ブラックアウトとの違い

アルコールの摂りすぎによって記憶を失う「ブラックアウト」時に、複雑な行動をとることがあります。意識は失われておらず、飲酒中の記憶だけがなくなります。ただし、ノンレム睡眠からの覚醒障害と区別できないこともあります。

 

解離性健忘(解離性とん走を伴う)との違い

解離性とん走は、それまでの記憶を失い、住み慣れた場所から立ち去る障害です。夜間解離性とん走は、睡眠中の覚醒期に生じます。通常、小児期に繰り返し身体的あるいは性的虐待を受けています。

 

パニック症との違い

パニック症は、ノンレム睡眠から突然覚醒して恐怖を感じる原因になる可能性があります。ただし、パニック発作はすぐ完全に覚醒します。ノンレム睡眠からの覚醒障害に典型的な錯乱や健忘、運動活動もありません。

 

医薬品誘発性複雑行動との関係

物質や医薬品の使用または離脱(使用をやめること)によって、ノンレム睡眠からの覚醒障害と同じような行動が誘発されることがあります。原因となる物質・医薬品は、ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬、オピオイド、コカイン、ニコチン、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抱水クロラールなどです。

 

●原因

睡眠時遊行症の原因として、鎮静薬の使用、断眠(意図的に眠らない)、睡眠覚醒スケジュールの乱れ、疲労感、身体的・精神的ストレスが関係していると考えられています。また、睡眠時遊行症の人の約80%は、家族にもこの障害がみられる可能性があります。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

 

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