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アルコール使用障害

アルコール使用障害

Alcohol use disorder

 

疾患の具体例

45歳、男性。高校生の頃から飲酒を続け、毎晩5〜10本の缶ビールを飲んでいます。ストレスが溜まると朝まで飲酒をし、仕事にも支障をきたしています。過度な飲酒によって肝硬変を患っており、何度か断酒を試みたことがあります。しかし数ヵ月の禁酒ののち、「もう大丈夫だ」と思って飲酒を再開し、そのまま過度な飲酒へと戻ってきました。家族は専門的な治療を受けることを望んでいます。

 

特 徴

アルコール使用障害は、アルコールを摂取することによる離脱、耐性、渇望といった行動的・身体的症状が生じる障害です。

アルコール離脱は、長時間かつ大量のアルコールを摂取していた人が、摂取量を減らすことで現れる症状で、発汗、手の振え、不眠、吐き気または嘔吐などが含まれます。アルコールの摂取を減らしてから4〜12時間で症状が現れます。それらは不快で強烈なものになることがあるため、離脱の症状から逃れるためにアルコール摂取を続けることになり得ます。

アルコールへの渇望は、アルコール以外のことを考えることが困難なほど強い飲酒欲求です。飲酒によって学業や仕事の成績が妨げられることがあります。子育てや家事などを怠ることにもつながり得ます。

この障害のある人は、アルコールを摂取し続けることで重大な身体的問題(例:記憶の欠損、肝障害)、心理的問題(例:抑うつ)、社会的または対人関係の問題(例:配偶者とのけんか、子どもの虐待)を起こしていると知っていても、アルコールを止められない場合があります。自動車の飲酒運転や、飲酒をした状態での水泳、機械の操作など、身体的な危険が及ぶ場面でアルコールを使用することもあります。

 

アルコールを大量に摂取することの繰り返しは、ほとんど全ての臓器に影響を与える可能性があります。特に消化器系、心循環器系、中枢および末梢神経系に影響を与えます。例えば、アルコールを過剰摂取している人の約15%には肝硬変や膵炎が見られます。また、食道、胃、他の部位の消化管のがんの発生率が高くなることもわかっています。軽度の高血圧は、アルコール使用障害に関連する疾患のうちもっともよく認められる疾患です。心筋症とほかのミオパチー(筋疾患)は、大酒家で発症率が高くなります。

末梢神経系の疾患としては、筋力低下、感覚異常と末梢の知覚低下が現れるかもしれません。アルコールの大量摂取を長い期間続けていると、認知障害、重度の記憶障害、小脳の変性が生じる可能性もあります。

 

有病率

アルコール使用障害はよくある障害で、アメリカでは12〜17歳における12カ月有病率は4.6%と見積もられており、18歳以上の成人でも8.5%と見積もられています。成人女性(4.9%)より成人男性(12.4%)のほうが多く見られます。年齢ごとの有病率は、18〜29歳(16.2%)がもっとも多く、65歳以上(1.5%)がもっとも少なくなっています。

 

経 過

アルコール使用障害の基準を2つ、もしくはそれ以上満たす状態の発症年齢は、10代後半、もしくは20代前半をピークとします。この障害のある人の大多数は、30代後半までに発症します。

アルコール使用障害の経過はさまざまですが、断酒の決心はしばしばアルコールによる危険な状況への反応としてなされ、数週間やそれ以上の禁酒が続き、その後、制限しながらの飲酒が一定期間続くことが多くあります。しかし、アルコールの摂取が再開されると、急激に消費が高まり、再び重大な問題が生じる可能性が高くなります。

 

原 因

環境要因:

アルコールの入手の可能性(値段など)、身についた個人的なアルコールの経験、ストレスの程度が含まれます。仲間との行きすぎた物質使用、アルコールの効果に対する誇張された期待感、ストレスに対する最適とはいえない対処法は、アルコール使用障害を誘発する可能性があります。

 

遺伝要因と生理学的要因:

アルコール使用障害は家族性があります。この障害のある人の近親者では、同じくアルコール使用障害がある割合が3〜4倍になります。

 

治 療

一般的に、介入、解毒、リハビリテーションという3段階で治療が行われます。

・介入

アルコール使用障害が治療されなければ、いかに有害な事態が起こるかを患者さんが認識するように援助します。アルコールが不眠や性機能障害、日頃のストレス対処への困難、抑うつ症状、不安、精神病症状などを引き起こすことを説明し、最小限の苦痛で断酒が達成できることを目指します。

 

・解毒

比較的健康で、社会との関わりのある患者さんの場合、離脱症状は軽い風邪程度で済むことが多いようです。軽症もしくは中程度の離脱症状には、初日に十分な量の中枢神経抑制物質を投与して症状を消失させ、次の5日間で徐々にその物質を減らしていくことが、多くの患者さんにとって最適です。

しかし、約1%のアルコール症患者は、アルコール離脱せん妄や、振戦せん妄といわれる状態になり、適切な治療法は確立されていません。

 

・リハビリテーション

多くの場合、次の3要素に分けられます。

  1. 断酒への強い動機を維持・増強する努力。
  2. 患者さんがアルコールから離れた生活に再適応するのを助ける。
  3. 再発防止

これらのリハビリテーションは、カウンセリングなどを通して行われます。断酒がいかに重要かを患者さんに思い起こさせ、日々の援助体制や対処戦略の発展を支持することが必要です。

 

診断基準:DSM-5

A.アルコールの問題となる使用様式で、臨床的に意味のある障害や苦痛が生じ、以下のうち少なくとも2つが、12カ月以内に起こることにより示される。

  1. アルコールを意図していたよりもしばしば大量に、または長期間にわたって使用する。
  2. アルコールの使用を減量または制限することに対する、持続的な欲求または努力の不成功がある。
  3. アルコールを得るために必要な活動、その使用、またはその作用から回復するのに多くの時間が費やされる。
  4. 渇望、つまりアルコール使用への強い欲求、または衝動
  5. アルコールの反復的な使用の結果、職場、学校、または家庭における重要な役割の責任を果たすことができなくなる。
  6. アルコールの作用により、持続的、または反復的に社会的、対人的問題が起こり、悪化しているにもかかわらず、その使用を続ける。
  7. アルコールの使用のために、重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を放棄、または縮小している。
  8. 身体的に危険な状況においてもアルコールの使用を反復する。
  9. 身体的または精神的問題が、持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいと知っているにもかかわらず、アルコールの使用を続ける。
  10. 耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:
    (a)中毒または期待する効果に達するために、著しく増大した量のアルコールが必要
    (b)同じ量のアルコールの持続使用で効果が著しく減弱
  11. 離脱、以下のいずれかによって明らかとなるもの:
    (a)特徴的なアルコール離脱症候群がある。
    (b)離脱症状を軽減または回避するために、アルコール(またはベンゾジアゼピンの
      ような密接に関連した物質)を摂取する。

 

該当すれば特定せよ

寛解早期:アルコール使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、少なくとも3カ月以上12カ月未満の間、アルコール使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまりアルコール使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)。

 

寛解持続:アルコール使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、12カ月以上の間、アルコール使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまりアルコール使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)。

 

該当すれば特定せよ

管理された環境下にある:この追加の特定用語は、その人がアルコールの入手を制限された環境下にある場合に用いられる。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

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