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こころの病気のはなし > 専門編 > 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害

鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害

鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害

Sedative, Hypnotic, or Anxiolytic Use Disorder

 

疾患の具体例

20代、女性。仲間らとのパーティでベンゾジアゼピンをもらい、使用してみると気分が穏やかになり、くつろいだ気持ちになりました。以来、気晴らしのためにたびたびベンゾジアゼピンを使用するようになりました。仕事は無断欠勤し、家事は何もせず、家族とも口をきかなくなりました。ベンゾジアゼピンを入手するために仲間の集まりに行きますが、積極的に社交するわけでなく、まどろんでいます。ベンゾジアゼピンの使用量はしだいに多くなってきました。

 

特 徴

鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の主要な原因物質は、ベンゾジアゼピン系薬物、バルビツレート、バルビタール類似物質です。医師が処方するすべての睡眠薬、ほとんどすべての抗不安薬が該当します。非ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は含まれません。

これらの物質は脳のはたらきを抑制する作用があり、鎮静作用、つまり心を穏やかにしたり軽度の多幸感をもたらしたりします。鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害は、その物質を使用したい強い欲求があります。そのため、当初の予定より大量に使用してしまう、あるいは減量・制限しようと思っても失敗してしまうことがよくあります。

 

この障害のある人は、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を使用することで仕事をたびたび休んだり、仕事の能率が悪くなったり、家庭内の役割を放棄したりします。そのために家族や身近な人との関係が険悪になったとしても、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬をやめられません。以前は好んでいたスポーツや趣味、ゲームなどを避けるようになる人もいます。こうした一連の症状はアルコール使用障害と似ています。

さらに身体的な影響として、徐脈(脈拍が遅くなる)、呼吸数の軽度の減少、血圧の軽度の低下など、自律神経機能のほとんどが軽度低下になりがちです。物質の種類によりますが、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬は過剰摂取によって死に至る危険性があります。特にアルコールと併用した場合はそのリスクが高まります。

 

この障害は、他の物質と一緒に使うことで生じる場合もあります。例えば、コカインやアンフェタミンといった物質から冷めるために、鎮静薬またはベンゾジアゼピンを中毒量になるまで使用したり、メタドンの作用を強めるために高用量のベンゾジアゼピンを使用したりするケースが考えられます。

 

有病率

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-4』において、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の12カ月有病率は12〜17歳で0.3%、18歳以上の成人で0.2%と推定されています。

 

経 過

多くの物質使用障害と同様に、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害は10〜20代の若年期に始まります。当初はパーティなど社交の場で使用していたものが、やがて毎日使うようになっていくケースが典型的です。

次に多いのは、もともと医学的な理由で鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を医師から処方されていた人が使用障害に陥るケースです。それらの物質を使用していると、そのうち体に耐性がつきます。より多い量でなければ効果を得られなくなり、手放せなくなっていくのです。

 

原 因

気質要因

衝動性や新奇性追求傾向(好奇心や積極性が強い)は、それぞれ物質使用障害の発現しやすさと関連します。遺伝的に決まっていることかもしれません。

 

環境要因

鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を入手しやすい環境は、それらの使用障害になるリスクを高めます。

 

遺伝要因と生理学的要因

他の物質関連障害と同じように、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の危険性は、個人、家族、仲間、社会、環境などの諸要因と関連し得ます。特に遺伝要因は重要なポイントで、思春期から成人期へと年齢が進むにつれて、遺伝的要因が大きく影響しているようです。

 

診断基準:DSM-5

A. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の問題となる使用様式で、臨床的に意味のある苦痛が生じ、以下の打ち少なくとも2つが、12カ月以内に起こることにより示される。

  1. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬をはじめ意図していたよりもしばしば大量に、または長期間にわたって使用する。
  2. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を減量または制限することに対する、持続的な欲求または努力の不成功がある。
  3. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を得るために必要な活動、その使用、またはその作用から回復するのに多くの時間が費やされる。
  4. 渇望、つまり鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の使用への強い欲求、または衝動
  5. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の反復的な使用の結果、職場、学校、または家庭における重要な役割の責任を果たすことができなくなる(例:鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の使用と関連して、仕事をたびたび休む、または仕事の能率が不良;鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬に関連した学校の欠席、停学、または退学:育児または家事のネグレクト)
  6. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の作用により、持続的、または反復的に社会的、対人的問題が起こり、悪化しているにもかかわらず、その使用を続ける(例:中毒の結果についての配偶者との口論、身体的喧嘩)
  7. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の使用のために、重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を放棄、または縮小している。
  8. 身体的に危険な状況においても鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の使用を反復する(例:鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬による機能不全中の自動車運転や機械の操作)。
  9. 鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬により身体的または精神的問題が、持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいと知っているにもかかわらず、その使用を続ける。
  10. 耐性、以下のいずれかによって定義されるもの:
    (a) 中毒または期待する効果に達するために、著しく増大した量の鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬が必要。
    (b) 同じ量の鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の持続使用で効果が著しく減弱
    注:この基準は、医学的管理下で鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を服用している人を満たすことは考慮されていない。
  11. .離脱、以下のいずれかによって明らかとなるもの:
    (a)持続的な鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬離脱症候群がある。
    (b)離脱症状を軽減または回避するために、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬(または、アルコールのような密接に関連した物質)を摂取する。
    注:この基準は、医学的管理下で鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬を服用している人を満たすことは考慮されていない。

 

該当すれば特定せよ

寛解早期:鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、少なくとも3カ月以上12カ月未満の間、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまり鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)

 

寛解持続:鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の基準を過去に完全に満たした後に、12カ月以上の間、鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害の基準のいずれも満たしたことがない(例外として、基準A4の「渇望、つまり鎮静薬、睡眠薬、または抗不安薬の使用への強い欲求、または衝動」は満たしてもよい)

 

現在の重症度を特定せよ

軽度:2〜3項目の症状が存在する。

中等度:4〜5項目の症状が存在する。

重度:6項目の症状が存在する。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

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