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月経前不快気分障害

月経前不快気分障害 (Premenstrual Dysphoric Disorder:PMDD)

 

疾患の具体例

25歳、女性。以前から月経前1週間になると気分が不安定になり、突然、泣き出したり、物を投げて怒り出したりしてしまいます。夫に暴言を吐いて夫婦関係が悪化し、離婚を切り出されています。体はだるく、甘い物を大量に食べて、何時間でも寝てしまいます。欠勤が多いため、会社の同僚との関係もよくありません。しかし、月経が始まると気分も落ち着き、「なぜ、あんな行動をしてしまったのか」と後悔に苦しみます。

 

特 徴

「月経前不快気分障害」(PMDD)は、月経が始まる数日前から不快な気分に陥り、月経開始の前後や直後に回復する障害です。感情の症状(例:突然悲しくなる、怒りっぽくなる、抑うつ気分や絶望感)と、行動の症状(例:仕事や学校、趣味などへの興味が薄れる)、身体の症状(例:だるい、疲れやすい、過食、過眠または不眠など)が合計5つ以上ある時に診断されます。ただし、感情の症状は必ず生じますが、身体や行動の症状は生じない人もいます。

月経前の不快な気分や体調の悪化は、健康な女性にもある程度は見られます。しかし、月経前不快気分障害は、過去1年間のほとんどの月経周期に症状が現れており、仕事や学業など日常活動を妨げるほどの強さです。夫婦関係や親子関係、友人との関係を阻害することもあります。

 

似た名前の疾患に「月経前症候群」(PMS)がありますが、こちらはより軽度な障害です。3回の月経周期中に、月経前5日間に1つでも感情症状(抑うつ、易刺激性、不安、混乱、社会的引きこもり)または身体症状(乳房の張り、腹部鼓腸、頭痛、四肢の膨脹)があれば診断されます。

ほかに、「月経困難症」という疾患もありますが、こちらは月経痛が強いことなどが基本的特徴で、月経が始まってから症状が現れます。月経前不快気分障害とはまったく別のものです。

 

なお、月経周期に関係なく症状が続いている場合は、気分障害や不安症かもしれません。また、月経周期に連動した症状でも、原因となりうる身体の病気(例:子宮内膜症)がないか、十分に診察する必要があります。

 

有病率

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』によると、月経前不快気分障害の12カ月有病率は、月経のある女性の1.8〜5.8%の間とされています。また、別の調査によると、80%の女性が月経前に気分や身体に何らかの変化を感じ、そのうち40%が軽度〜中等度の月経前症状があります。月経前不快気分障害の診断基準を全て満たす女性は3〜7%に過ぎないとも言われています。

 

経 過

月経前不快気分障害の予後ははっきりとわかっていませんが、典型的には月経開始前後に症状がピークに達します。月経が始まってからもなお症状が続くこともまれではないものの、月経開始後に無症状期間があります。

効果的な治療を受けない限り、症状は慢性的に続く傾向があります。閉経が近づくにつれて症状が悪化する人も多いようです。通常、閉経後に症状は消えますが、周期的ホルモン補充療法を受けている場合は、症状が再燃する可能性があります。

 

原 因

月経周期に連動するホルモンが月経前不快気分障害と関連しているようですが、正確な病因はわかっていません。ほかに、周囲の環境が原因となり得ると考えられています。

環境要因:ストレスや対人関係のトラブル、季節の変化などが原因になることがあります。

遺伝要因と生理学的要因:月経前不快気分障害の遺伝率は明らかになっていません。 経過の修飾要因:経口避妊薬を使っている場合は、使っていない場合に比べて月経前症状が少ない可能性があります。

 

治 療

痛みを鎮痛薬で抑えたり、不安や不眠を鎮静剤で鎮めたりする対症療法が中心です。むくみには利尿薬が用いられます。患者さんによっては、SSRIを短期間使用し、感情症状に対処します。

 

診断基準:DSM-5

A..ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも5つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経修了後の週には最小限になるか消失する。

 

B.以下の症状のうち、1つまたはそれ以上が存在する。

  1. 著しい感情の不安定性(例:気分変動;突然悲しくなる、または涙もろくなる、または拒絶に対する敏感さの亢進)
  2. 著しいいらだたしさ、怒り、または対人関係の摩擦の増加
  3. 著しい抑うつ気分、絶望感、または自己批判的思考
  4. 著しい不安、緊張、および/または“高ぶっている”とか“いらだっている”という感覚。

 

C.さらに、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)が存在し、上記基準Bの症状と合わせると、症状は5つ以上になる。

  1. 通常の活動(例:仕事、学校、友人、趣味)における興味の減退
  2. 集中困難の感覚
  3. 倦怠感、易疲労性、または気力の著しい欠如
  4. 食欲の著しい変化、過食、または特定の食物への渇望
  5. 過眠または不眠
  6. 圧倒される、または制御不能という感じ
  7. 他の身体症状、例えば、乳房の圧痛または膨脹、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚、体重増加

注:基準A〜Cの症状は、先行する1年間のほとんどの月経周期で満たされていなければならない。

 

D.症状は、臨床的に意味のある苦痛をもたらしたり、仕事、学校、通常の社会活動または他者との関係を妨げたりする(例:社会活動の回避;仕事、学校、または家庭における生産性や能率の低下)。

 

E.この障害は、他の障害、例えばうつ病、パニック症、持続性抑うつ障害(気分変調症)、またはパーソナリティ障害の単なる症状の増悪ではない(これらの障害はいずれも併存する可能性はあるが)。

F.基準Aは、2回以上の症状周期にわたり、前方視的に行われる毎日の評価により確認される(注:診断は、この確認に先立ち、前提的に下されてもよい)。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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