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醜形恐怖症

醜形恐怖症

Body dysmorphic disorder

 

疾患の具体例

25歳、女性。自分の肌は「醜い」と強い不満を持っています。他の女性に比べて吹き出物が多く、くすんでいると確信し、常に化粧を厚塗りしています。ほとんど1日中、肌のことを考えており、1時間に何度も鏡を見なければ気が済みません。周囲が「そんなことはない」と言っても信じず、化粧が崩れることが気がかりで笑うことも避けています。このように感じるようになったのは15歳頃で、それまでは利発だった性格が抑うつ的になり、高校を中退。成人してからも定職に就いていません。

 

特 徴

醜形恐怖症は、体の一部分、あるいは複数の部分が醜く感じたり、異常である、あるいはゆがんでいるなどと感じたりする障害です。およそ100年前から医学者に認識されている障害で、従来は「醜形恐怖」と呼ばれていました。フロイトが書いた「狼男」の症例記述の中には、その男性が自分の鼻に過剰な関心を持っていたとされています。アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』で「醜形恐怖症」という病名がつけられ、強迫症スペクトラムの一種として分類されています。

 

醜形恐怖症の心配の程度は「魅力的ではない」という軽度なものから、「ぞっとする」「まるで怪物みたい」と感じる重度のものまでさまざまです。他人からはそのように見えないか、些細なことのように見えても本人は悩みます。

よく対象となる体の部位は、皮膚(にきび、あざ、目鼻立ち、しわ、青白い顔色など)、毛(薄い髪の毛、過剰な体毛など)、鼻(大きさや形など)です。しかし、身体のどの部位でも心配となり得るので、人によっては目、歯、体重、腹部、胸部、脚、顔の大きさや形、唇、顎、眉毛、性器などについて悩んでいます。身体の左右が非対称であることにとらわれる人もいます。

 

醜い、魅力的ではないなどと感じる感情は侵入的(だまっていても頭に入ってくる考え)です。そうした考えにとらわれている時間は1日に3〜8時間におよび、本人としても時間の浪費に困っていますが、自分で制御することは困難です。

とらわれている最中は、何度も鏡を見たり、過剰に身繕いをしたり、頻繁に服装を変えたりすることがあります。あるいは、他人と自分を比較したり、自分が安心するようなことを言ってもらおうとします。過剰な運動や筋力トレーニング、化粧の追求、美容製品などの衝動買いをする人もいます。皮膚の欠点をなんとかしたくて、衝動的に皮膚をむしってしまうこともあり、その結果、皮膚が傷ついたり感染したりといった影響も生じ得ます。こうしたとらわれ行為の最中、本人は強い不安感や不快感を覚えていることがあります。

多少のとらわれ感であれば、健康な人にも少なからずあるものですが、とらわれ行為によって長時間を浪費し、精神力も消耗し、日常生活に支障を来すレベルの場合に「醜形恐怖症」と診断されます。

 

有病率

この障害はあまり研究されていません。精神障害であるにもかかわらず、患者さんが皮膚科や内科、形成外科などに相談することが多く、精神科の医学研究の対称になりにくいためです。ただ、『DSM-5』によるとアメリカの成人における醜形恐怖症の時点有病率は2.4%(女性2.5%、男性2.2%)、アメリカの美養整形外科患者では7〜8%とされます。

 

経 過

この障害の平均発症年齢は16〜17歳で、2/3の患者さんが18歳以前に発症しています。突然、醜形恐怖症を発症する人もいますが、多くの場合、潜在的なとらわれ感が徐々に始まり、障害というレベルにまで発展していきます。潜在症状は12〜13歳で始まる人が多いようです。

治療を受けた患者さんは改善の見込みがありますが、どのくらいの治療期間が必要かはわかっていません。たいていは慢性の経過をたどります。

 

原 因

環境要因:育児放棄や虐待を受けたことのある人は、醜形恐怖症のリスクと関連性があります。

遺伝要因と生理学的要因:第一度親族に強迫症のある人がいると、醜形恐怖症の有病率が高くなります。

 

治 療

醜形恐怖症の患者さんが、自分で欠点だと思う部位に対し、外科や皮膚科、歯科などの治療を受けても満足することはあまりありません。

精神科では、三環系抗うつ薬やモノアミン酸化酵素阻害薬、ピモジド(オーラップ)が有効だったという報告があります。また、選択的セロトニン系薬物が少なくとも50%の患者さんに効果的だったという指摘もあります。

なお、心理療法などを受けて、「自分を醜い」と感じる神経症的な気持ちの本質を理解することが理想的です。そうでなくては、患者さんは治療できない医師に憎悪を募らせたり、うつ病になったりしかねません。

 

診断基準:DSM-5

A. 1つまたはそれ以上の知覚された身体上の外見の欠陥または欠点にとらわれているが、それは他人には認識できないかできても些細なものに見える。

B. その障害の経過中のある時点で、その人は、外見上の心配に反応して、繰り返し行動(例:鏡によく確認、過剰な身繕い、皮膚むしり、安心希求行動など)、または精神的行為(例:他人の外見と自分の外見を比較する)を行う。

C. その外見へのとらわれは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

D. その外見へのとらわれは、摂食障害の診断基準を満たしている人の、肥満や体重に関する心配ではうまく説明されない。

 

該当すれば特定せよ

筋肉に関する(筋肉醜形恐怖):その人は、自分の身体の造りが小さすぎる、または筋肉が不十分であるといった考えにとらわれている。これは、しばしばあることだが、その人が身体の他の部分にとらわれている場合にも用いられる。

 

該当すれば特定せよ

醜形恐怖症の確信に関する病識の程度を示せ(例:「私は醜く見える」「私はゆがんでいるように見える」)。

病識が十分または概ね十分:その人は、醜形恐怖症の信念がまったく、またはおそらく正しくない、あるいはそれらが正しいかもしれないし、正しくないかもしれないと認識している。

病識が不十分:その人は、醜形恐怖症の信念がおそらく正しいと思っている。

病識が欠如した・妄想的な信念を伴う:その人は、醜形恐怖症の信念が正しいと完全に確信している。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 (医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』 (メディカルサイエンスインターナショナル)

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