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概日リズム睡眠-覚醒障害群

概日リズム睡眠-覚醒障害群

Circadian rhythm sleep-wake disorders

F51.2 非器質性睡眠・覚醒スケジュール障害

Nonorganic disorder of the sleep wake schedule

 

疾患の具体例

55歳、男性。長年、飲食店でシフト勤務をしてきました。仕事のシフトによって就寝時間ばバラバラですが、休日には午前中から家族と外出します。以前は、シフトに合わせて寝起きできていましが、最近は寝付きたい時間に寝付けません。そのため睡眠時間が不足し、仕事中も強い眠気に苦しんでいます。

 

特 徴

概日リズム睡眠-覚醒障害群は、概日リズムの異常によって望ましい時間帯(通常は夜〜朝)に睡眠がとれず、日常生活に影響を来す障害です。概日リズムとは、約1日(25〜26時間)の周期で刻む生理現象(睡眠-覚醒、体温、代謝、ホルモン分泌など)の変動で、体内時計とも呼ばれます。概日リズムが、望ましい睡眠-覚醒時間とずれているときに、この障害が発症します。

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』では、以下のように下位分類しています。

 

睡眠相後退型

主要な睡眠時間帯が、希望する睡眠時間帯よりも遅くなるために、不眠や過剰な眠気が生じる病態です。夕方〜深夜にかけて著しく覚醒し、午前中に眠気や疲労感が強くなります。極端な夜型人間とも呼ばれます。

 

睡眠相前進型

概日リズムの周期が前方にずれており、早い時間(夕方頃)から眠くなることがあります。翌日は早朝に目が覚め、もっと眠ろうと思ってもはっきりと覚醒しています。

 

不規則睡眠-覚醒型

概日リズムが定まっていない、あるいは極端に不規則になっている病態です。いつ眠って、いつ起床するかは予測不可能で、1日のうち3回以上に分けて眠ります。量的には必要な睡眠時間がとれていても、夜更かしがちで、日中は眠気が強く、頻繁に居眠りをします。

 

非24時間睡眠-覚醒型

概日リズムが24時間よりも長い、または短くなっていく病態です。通常、人間の概日リズムは25〜26時間で、地球の自転による1日24時間周期より長めですが、朝の光を浴びることでリセットされます。しかし、この病態がある人は概日リズムがリセットされず、日に日にずれていきます。概日リズムと望ましい睡眠-覚醒サイクルとのずれが12時間に達すると、徐々に睡眠相のずれが解消していくものの、数日後には再びずれが生じます。

 

交替勤務型

午前8時〜午後6時の時間枠以外に交替勤務(特に夜勤)する人に見られる病態です。勤務時間がばらばらで、睡眠-覚醒サイクルも一定でない生活を続けることで生じます。シフトワーカーは、仕事のある日はシフトに合わせて寝起きしていても、休日には別の時間帯に寝起きすることが多いため、ひどい不眠や、起きていたい時間の強い眠気に襲われます。

 

なお、睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)では、ほかに「時差型」「身体疾患によるもの」を含む9つの概日リズム睡眠障害が分類されています。

 

有病率

睡眠相後退型

一般人口における有病率は約0.17%ですが、青年期においては7%以上になるようです。

 

睡眠相前進型

推定有病率は中年成人の約1%で、高齢になるほど高くなります。

 

不規則睡眠-覚醒型

一般人口における有病率は不明です。

 

非24時間睡眠-覚醒型

全盲の人の50%に生じると推定されています。一般人口における有病率は不明ですが、視覚障害のない人にはまれなようです。

 

交替勤務型

有病率は不明ですが、夜勤者人口の5〜10%がこの障害にかかると推定されています。

 

経 過

睡眠相後退型

典型的には青年期または成人期早期に始まります。3カ月以上続く持続性で、成人期を通して良くなったり悪くなったりします。

 

睡眠相前進型

通常、成人期後期に発症します。経過は持続的であることが多く、典型的には3カ月以上続きます。

 

不規則睡眠-覚醒型

発症年齢はさまざまですが、高齢者においてより多く見られます。経過は持続的です。

 

非24時間睡眠-覚醒型

視覚障害のない人の場合、青年期または成人期早期に発症することがあります。経過は持続的で、仕事などのスケジュールが変わることに伴って良くなったり、悪くなったりします。

 

交替勤務型

どの年齢にも生じ得ますが、50歳以上の有病率が高くなります。典型的には、時間とともに悪化しますが、日中勤務に戻った場合は解決します。

 

原 因

睡眠相後退型

平均より長い概日リズム、光に対する感受性の変化、「疲れたから眠る」という睡眠恒常性が障害されることなどが素因になっているかもしれません。時計遺伝子(概日リズムを作る遺伝子。例:PER3、CKle)の変異が関係している可能性もあります。

 

睡眠相前進型

午後の遅い時間〜夜の早い時間に光を浴びることが少なかったり、早朝に起床して朝日を浴びることは、睡眠相前進型の危険を高めます。また、睡眠相前進型の人は、時計遺伝子であるPER2遺伝子やCKI遺伝子の変異を示していることがあります。

 

不規則睡眠-覚醒型

アルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患、子どもの神経発達症群が危険を高めます。環境要因としては、日中の活動の減少や、それに伴う光を浴びる時間の不足などが挙げられます。入院中の人によくある状況です。

 

非24時間睡眠-覚醒型

光を浴びる機会が少なかったり、光に対する感受性が低かったりすることなどが原因になるかもしれません。視覚障害のない人は、睡眠習慣の変化(例:夜勤、失業)のあとに生じることがよくあります。

 

交替勤務型

朝型の素質、十分な休息に8時間以上の睡眠が必要な体質、社会的・家庭的要求(例:幼い子どもの世話があるため眠れない)などが原因になり得ます。ただ、夜の勤務であっても、昼間は十分に休める人は、この病態の危険は低いようです。

 

治 療

旧来から、概日リズムを望ましい睡眠-覚醒サイクルに合わせるために、少しずつ就寝時間を後退させる「時間療法」が行われてきました。しかし、望ましいタイミングで概日リズムを維持することは難しいため、時間療法に代わるものとして「高照度光療法」が登場しました。概日リズムが、強い光に反応してリセットされる仕組みを利用したものです。専用装置を使って高照度光(1万ルクス以上)を浴びることで、概日リズムを望ましい睡眠-覚醒サイクルに合わせていきます。

 

診断基準:DSM-5

. 持続性または反復性の睡眠分断の様式で、基本的には、概日機序の変化、または内因性概日リズムとその人の身体的環境または社会的または職業的スケジュールから要求される睡眠-覚醒スケジュールとの不整合による。

. その睡眠の分断は、過剰な眠気または不眠、またはその両者をもたらしている。

. その睡眠の障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

 

いずれかを特定せよ

睡眠相後退型

睡眠開始と覚醒時間が後退している様式であり、希望する、または慣習的に受け入れられている早い時刻での入眠と覚醒ができない。

 

該当すれば特定せよ

家族性:睡眠相後退の家族歴がある。

 

該当すれば特定せよ

非24時間睡眠-覚醒型との重畳

睡眠相後退型は、もう1つの概日リズム睡眠-覚醒障害である非24時間睡眠-覚醒型と重畳することがある。

 

睡眠相前進型

睡眠開始と覚醒時間が前進している様式で、希望する、または慣習的に受け入れられている遅い時刻まで覚醒または睡眠を維持できない。

 

該当すれば特定せよ

家族性:睡眠相前進の家族歴がある。

 

不規則睡眠-覚醒型

時間的にばらばらになった睡眠覚醒様式で、睡眠と覚醒時間帯の時間合わせが24時間を通して変化する。

 

非24時間睡眠-覚醒型

睡眠覚醒周期が24時間の環境に同期しない様式で、睡眠開始と覚醒時間が一方的に毎日(通常はより遅い時間に)ずれていく。

 

交替勤務型

交替勤務スケジュール(すなわち慣習的でない勤務時間の要求により)に関連した、主要睡眠時間帯における不眠、および/または主要な覚醒時間帯における過剰な眠気(不注意な睡眠を含む)

 

特定不能型

 

該当すれば特定せよ

エピソード型:症状は少なくとも1〜3カ月未満続く。

持続型:症状は3カ月またはそれ以上続く。

再発型:1年の間に2回以上のエピソードが起こる。

 

診断基準:ICD-10

以下の臨床的特徴は確定診断のために必須である。

  1. 患者の睡眠・覚醒パターンは、その社会で正常とされ、同一の文化環境下にある大多数の人々に共通する睡眠・覚醒スケジュールと同期しない。
  2. 患者は主たる睡眠時間帯には不眠に、覚醒中は過剰な眠気に、少なくとも1ヵ月間ほとんど毎日かあるいは短い間隔で繰り返し悩まされる。
  3. 睡眠の量、質そして時間的調節の不十分さは患者を著しく苦しめたり、毎日の生活における通常の活動を妨げたりする。

この障害の精神科的あるいは身体的原因が確定できないときは、このコードを単独で使用すべきである。それにもかかわらず、不安、抑うつあるいは軽躁などの精神症状があっても、この障害が患者の臨床像を支配しているならば、非器質性睡眠・覚醒スケジュール障害という診断は無効ではない。他の精神症状が非常に顕著で持続的な場合には、特殊な精神障害の診断を別につけるべきである。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

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