こころの病気(専門編) |ハートクリニック大船

自己愛性パーソナリティ障害

F60.8 他の特定のパーソナリティ障害

Other specific personality disorder

自己愛性パーソナリティ障害

Narcissistic personality disorder

疾患の具体例

25歳、男性。営業マン。自分は人に好かれる特別な魅力があり、どの社員よりも会社に貢献していると信じています。上司や同僚には、毎日のように自分の能力を自画自賛し、口を開けば「普通の人とは違うから」と言っています。しかし、実際の営業成績は真ん中より下のため、あまり評価されません。本人は、上司が自分をねたんで足を引っ張っていると怒っています。社内で孤立し、抑うつ的な気持ちでいますが、「一流の人でなければ自分の素晴らしさを理解できない」と不満に感じています。

特徴

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」によると、自己愛性パーソナリティ障害の特徴は、「自分は特別で重要な存在である」と誇大な感覚を持っていることです。常に自分の能力を過大評価し、しばしば自慢げに見栄を張っているように見えます。自分は褒められて当然であると思い込んでおり、賛美が得られない時は驚くかもしれません。自分の成功や権力、美しさ、理想的な愛などについての空想にふけっていることもあります。

自己愛性パーソナリティ障害の人達は、自分を理解できるのは特別な人か地位が高い人だと思っていますし、そうした人達と関係があって当然だと思っていることがあります。一方で、他人の努力や貢献は過小評価します。相手の気持ちに共感できないため、しばしば人間関係上の困難を抱えます。

この障害のある人は心が傷つきやすく、抑うつ傾向があります。表には出さないかもしれませんが、批判された言葉が脳裡を離れず、恥をかいた、うつろで空しいなどと感じ続けるかもしれません。

なお、WHOの診断ガイドライン「ICD-10」では、自己愛性パーソナリティ障害をF60.8「他の特定のパーソナリティ障害」に分類しています。

有病率

DSM-IV(1994年に出版されたDSM)の定義に基づく自己愛性パーソナリティ障害の有病率は、調査を実施した地域で0~6.2%の間と見積もられています。また、この障害と診断される人のうち、50~75%が男性です。

経過

自分を過大評価する特性そのものは、青年期に特によく見られますが、そのまま自己愛性パーソナリティ障害になるとは限りません。この障害のある人は、自分の強さや美しさ、若さなどに執着するため、加齢によって肉体が衰えたり、それまでの仕事ができなくなったりした時に、適応することが特に困難かもしれません。

治療

自己愛性パーソナリティ障害の治療は難しいとされていますが、精神分析的接近法によって変化がもたらされるという説があります。理想的な環境で分かち合いを学ぶ集団療法によって、他者への共感を促すことができるという医師もいます。薬物療法としては、気分変動のある患者さんにリチウム(リーマス)が使用されています。また、この障害のある人は、人から拒絶されることに耐えられないため、抑うつ的になりやすい傾向があります。そうした場合は抗うつ薬も使用されます。

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