こころのはなし

こころの病気に関わるいろいろなお話を紹介します。
「こころの病」についての知識をはじめ、
バラエティに富んだ情報を提供するなど、
患者様はもちろんご家族など皆様との交流を目指すコーナーです。

患者さんやご家族への支援

患者さんやご家族のための様々な活動をご紹介します。

精神障害のある人の「家族会」

精神障害があることにより、患者さん自身はもちろん、家族も悩みや困りごとが生じやすくなります。「精神障害者家族会」(以下、家族会)は、精神障害のある人の家族が集まり、悩みを相談したり、支え合ったりする場です。また、医療制度や福祉制度などに関する情報共有をする役割も持ちあわせています。

家族会にはいくつか種類があります。代表的なものに、精神科の病院やクリニックなどを基盤とする「病院家族会」、市区町村などを基盤とする「地域家族会」、保健所の事業として行われる「保健所家族会(家族教室)」、福祉施設などを基盤とする「施設家族会」、地域を越えた有志による家族会などがあります。

家族会の活動は、1960年代に精神科病院の職員や患者家族が中心となって始まりました。精神障害に関する社会の理解を求め、患者さんの社会復帰への道筋を整える必要があったためです。精神障害のある人や家族が孤立せず、安心して暮らしていけるようにするために、家族会は長い年月をかけて活動してきました。

その後、活動内容は少しずつ拡大していきました。家族会の全国組織「公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)」のウェブサイトによると、現在は「相互支援」「学習」「社会的運動」が活動の3本柱となっています。以下、同サイトからの引用です。

  • 相互支援(助け合い)
    語り合う
    「自分だけが悩んでいるのではなかった」「思いを受け止めてもらえた」など、仲間がいるという発見を通して安心や癒しを得られる場です。
    相互交流
    語り合うだけではなく、レクリエーションや行事を開催し、参加することで相互の親睦を深め、さらなる経験や活力を得られる場です。
    情報交換と手助け
    情報社会といわれますが、現実にはどんな病院があるのかさえ個人のレベルではわからない状況で、家族会はより具体的な情報を交換できる場、またほんとうに困っているときに実際的な手助けを得られる場ともなります。
  • 学習(学び合い、知見を広める)
    今や家族が学ぶべきことは、病気や治療に関することだけにとどまらず、リハビリ・福祉制度や障がい者に関係する法制度、利用できる社会資源など多方面にわたります。家族会ではこれらの学習を、家族教室・研修会・講演会・施設の見学会などを通して実践しています。また、多くの場合家族が聞き手としてだけ参加するのではなく、家族としての声を発し話し合える場が確保されています。
  • 社会的運動(外に向かっての働きかけ)
    医療や制度などの改善を要求し作業所やグループホームなど社会資源の開発や運営にも力を入れてきました。現在、福祉制度や計画に向けての当事者としての発言、署名活動・陳情、会議への参加、広報・啓発等々、家族の対外的活動が重要な位置を占めるようになりました。さらに家族自らがその経験と智慧や知識を踏まえ家族相談を展開しているところも増えてきています。

活動の頻度は会によって異なりますが、定期的(月1回、年数回など)に家族同士が集まったり、専門家による講演会やシンポジウムなどを催したりしているところが多いようです。また、日時を決めて家族からの電話相談や面接相談に応じている家族会もあります。

家族会の連絡先や入会方法、詳しい活動内容などは、お住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所、市区町村役場などで聞くことができます。また、各都道府県にはそれぞれの家族会を統括する連合会があります。神奈川県の場合は、「NPO法人 じんかれん(神家連)」(横浜市以外)「NPO法人 浜家連」(横浜市のみ)があり、こちらでも家族会の情報を聞くことができます。

精神障害のある当事者の会

精神障害のある当事者の会(当事者団体、セルフグループ)は、当事者からの相談に乗ったり、福祉サービスの利用のための支援をしたり、精神障害のある人が暮らしやすい社会にするための啓発活動などをする会です。

全国組織として「NPO法人ぜんせいれん(全国精神障害者団体連合会)」があります。ほか、それぞれの地域にNPOや任意団体などによって会が設置されています。身近にどんな会があるかは、市区町村役場や保健所、社会福祉協議会などにお問合せください。

神奈川県内にある会については、「神奈川県社会福祉協議会」のホームページの「セルフヘルプ・グループ活動」にも情報があります。※精神障害以外の障害に関する情報もあるため、よくご確認ください。

会によっては、精神障害のある当事者が同じような課題を抱える人の悩みを聞いたり、アドバイスをしたりする「ピアサポート」「ピアカウンセリング」を実施しています(ピアは仲間の意味)。当事者同士だからこそ、家族にも言えないようなことを相談したり、障害による困難を共感できたりする利点があります。ピアサポートは、身体障害や難病などの分野で先駆的に行われてきました。精神障害者のためのピアサポートはまだ少数ですが、少しずつ広がりを見せています。

また、ピアサポートを行う人を「ピアサポーター」(ピアスタッフ)といいます。ピアサポーターは精神障害を経験しているだけでなく、「リカバリー」(精神障害がありながらも、自分らしく主体的に生きていけるようになったこと、またはその過程)を経ていることもあります。その人生経験から多様な助言をすることや、相談者のロールモデルになることなどが期待されています。

都道府県によっては、ピアサポーターの養成事業を行っています。また、NPOや任意団体などでもピアサポーターを養成している例があります。

##参考文献『ピアサポートの活用を促進するための事業者向けガイドライン』

精神障害のある人の「自助グループ」

自助グループは、薬物やアルコール、ギャンブルなどの依存症のある患者さんが、同じ問題を抱えた仲間と自発的に結び付いたグループです。発達障害や摂食障害、アダルト・チルドレン、ひきこもり、犯罪被害者などさまざまなテーマの自助グループもあります。

広い意味での自助グループには、患者会(当事者の会)や家族会も含まれます。当事者同士や家族同士が集まって気持ちをわかちあったり、情報交換をしたりすることが活動の中心です。一方、もう少し狭い意味での自助グループは、依存症などから抜け出したい人に対するケアやリハビリを行う施設(回復支援施設)を指します。依存症などから回復した人が運営に携わっています。

薬物関連の自助グループとしては「DARC(ダルク)」が有名です。ダルクはDrug Addiction Rehabilitation Centerの略で、各地に施設があります。神奈川県内は横浜市、川崎市、相模原市の3カ所です。ダルクのデイケア(通所リハビリ)では当事者同士のミーティング、依存症について学ぶワークブック、スポーツやレクリエーションなどを行います。また、入所施設を持つダルクもあります。薬物が手に入らない環境に住み、生活しながら回復プログラムを受けることで社会復帰を目指します。

アルコールの自助グループは、「日本断酒連盟」という全国組織があります。各地に相談窓口が設けられており、その一つとして「神奈川県断酒連合会」があります。例会とよばれるミーティングの開催を基本活動とし、自分の酒害体験を話したり、仲間の酒害体験を聞いたりすることによって、アルコールの問題からの回復を目指します。

ギャンブルについては、「ギャンブラーズ・アノニマス日本」という自助グループがあります。強迫的なギャンプルからの回復を願う人同士のグループです。定期的に各地でミーティングを開いています。

依存症は、本人が「やめたい」と思っても、自分だけで問題を解決することが難しい障害です。初めは少し躊躇するかもしれませんが、自助グループに参加することで仲間と出会い、お互いに励まし合いながら回復を目指してはいかがでしょうか。

※身近な自助グループについて詳細を知りたい場合は市区町村役場、保健所、精神保健福祉センターなどにお問い合わせください。
※新型コロナウイルスの影響で、ミーティングなどの活動を休止している団体もあります